新型コロナ自体で子供が死亡するリスクは低いとされていますが、川崎病の発症が多いことが最近指摘されています。
実際新型コロナは川崎病発症の原因なんでしょうか。
気になる報告がイタリアよりありましたので、これを紹介します。
新型コロナで川崎病が増えているのは因果関係か
川崎病は日本人医師が発見した、子供の重要な病気です。
命に関わったり、心臓カテーテル治療が必要になったりします。
日本で多い病気で、5歳以下の子供10万人につき
・日本では240人
・アメリカでは21人
の川崎病が認められるとのことです。
*しかし、アメリカでは川崎病を診断できる医師が少ない現状があり、この単純な比較はなんとも言えません。
日本人でずっと発症率が多いのは間違いないと思いますが。
川崎病の原因は明らかになっていません。
が、実は今までもコロナウイルスの関与は検証されてきました。
ウイルス感染により、過剰な免疫反応が起きて、川崎病になるかも、という考え方です。
コロナウイルスは御存知の通り、風邪の一般的なウイルスですね。
発端はアメリカのグループが11人の川崎病患者 vs 22人のコントロールで、PCRにて川崎病患者に多くコロナウイルスが同定されたと報告されたことでした(J Infect Dis 2005; 191: 499–502.)。
しかしこの後、日本発の研究で、コロナウイルスと川崎病の関連性は否定されてきました(J Infect Dis 2005; 192: 351–52.など)。
こんな背景がある中、新型コロナにより川崎病症状が出る、とイタリアから報告されたわけです。今週のLancetです(Lancet 2020 org/10.1016/ S0140-6736(20)31103-X)。
イタリアでの川崎病発症頻度、なんと30倍に
イタリアで最大規模の子供病院からの報告です。
臨床の感覚で、「川崎病増えてるなー」と思って調べたんだと思います。
研究方法は単純です:
・(新型コロナが流行ってからの)2020年2月18日〜4月20日
・(その前5年間の)2015年1月1日〜2020年2月17日
で、川崎病と診断された患者を比較したというもの。
結果、患者数は
・新型コロナが流行ってからの2ヶ月で10人(実際診断されたのは3/17からの約1ヶ月間)
・その前の5年間で19人
でした。
計算すると、約30倍の診断頻度。
*ちなみに新型コロナ感染が確認されたのは、10人中8人でした(陰性のうち1人はイムノグロブリンによる治療後の検査でした)
論文では新しく診断された10人の詳細な情報や、今までとの比較がされています。
やや年長者が多かったり(典型的には5歳未満のところ、平均7.5歳)、リンパ球減少など新型コロナに典型的な所見が認められたり。
なので著者らは、”Kawasaki-like disease”としています。
*ただし患者数があまりに少ないので、一概に言える比較ではありません。
解釈は?
まあイタリアでは新型コロナが原因で、川崎病が増えたんでしょう。
川崎病の診断基準を満たすので、川崎病と言って良さそうですが、著者らはKawasaki-like diseaseとして慎重に対応する姿勢をみせています。
専門外なので以下ただの感想ですが、
おそらくごく一部の人で、新型コロナ感染を含むウイルス感染が過剰な免疫応答が引き金となり、川崎病を発症するんだと思います。
つまり
川崎病になりやすい因子×発症のトリガー(新型コロナ感染含む)×運
で発症するか決まる中、
発症のトリガーを有する子供が劇的に多くなったことで川崎病が増えた
というのが真実な気がします。
*つまり新型コロナが・・というのでなく、一般的なウイルス感染が・・ということです。
風邪が原因で発症する病気は、川崎病以外にもたくさんありますよね。
上記の「川崎病になりやすい因子」は「日本人であること」がかなり強いと思われます。
なので、日本でも新型コロナが大流行すれば川崎病が増えると予想します。
(当然、5月現在では全く大流行とは言えない状況です)
結論
新型コロナは川崎病を発症するトリガーかもしれないが、なんであれウイルス感染が引き金となっていることは否定できない。
ではまた。