「ケンコム」アプリの効果検証【自分の論文解説】

ケンコムというアプリ、ご存知ですか?

数多ある健康アプリの中、本当に効果があるのかの「エビデンス」の創生が重要になってきています。

この論文では、初めて、ケンコムの健康効果を疫学研究として検証したものです。

 

 

「ケンコム」アプリの効果検証

「ケンコム」アプリの効果検証

ケンコムはDeSC ヘルスケア株式会社が開発したアプリ。

アプリで健康増進するという分野はmobile health (mHealth)と言われ、最近急速に流行ってきています。

これは一般レベルでも、科学者レベルでも。

どれくらいかというと、mHealthのトピックを専門にする科学雑誌が結構あるほどです。

 

日本で一番有名なのは、もしかしたら「CureApp」かもしれません。

これは禁煙を補助するアプリで、エビデンスもあり(J Med Internet Res. 2019;21(4):e13520.など)、薬事承認を受けています。

 

さて、ケンコムとは

・健康関連記事

・歩数や体重などのモニター、フィードバック機能

・健康診断の結果を入力なしでみれる

・ケンコムポイント

・「歩活」というイベント参加

など沢山の機能を持つアプリ。

 

今回発表したのは、このアプリが

「どれくらい歩数上昇に寄与するか」

「それがどれくらい心血管リスクの検査値に影響するか」

を検討した研究です(J Med Internet Res. 2021;23(4):e21622.)。

 

 

どういう研究?

タイトルの通り、12602ユーザーの「アプリ登録前後」のデータを比較したものです。

 

やったことは単純で、

・Step analysis: 1年間平均歩数の比較

・CVD risk analysis:登録前の健診情報と、登録後1-2年の健診情報の比較

+ Sensitivity analysis:CVD risk analysisを「高血圧、糖尿病、脂質異常症の内服薬なし」の参加者に絞って解析

というもの。

 

*すごいのはこの解析を可能にしたケンコムの枠組みです。

詳細は論文に譲りますが(Openです)、基本的には健保のデータベースとケンコムのデータベースを紐付け、その後匿名化することでなし得ています。

この枠組みを使って、今後も色々な研究が行われるものと思います。

 

 

結果は?

✅Step analysis

・アプリ登録後、1年間で平均して510歩の増加

・特に「歩活」参加が歩数増加に寄与

→「歩活」は半年ごと、それぞれ1ヶ月の期間で行われる、「グループの総歩数」を競うイベント

→期間中は1000-2000歩程度の歩数増加あり、期間外もその効果がやや持続する現象が認められました

 

✅CVD risk analysis

・ケンコム登録後歩数が上がった順に5分位にわけました

→一番上がった群 vs. 一番上がらなかった群で、様々な交絡因子調整後、HDLの増加や体重減少が認められました

・Sensitivity analysisでも同様の傾向が見られました

 

 

解釈は?

・ケンコム登録後は平均して歩数が上がる

・歩数が上がった人は上がってない人と比較して、健康診断の検査値も改善する

ということを示しました。

前者は因果関係に近く、後者は因果関係とは言い切れません(residual confoundingがありうる)。

 

「1年間の平均歩数」というのはリッチなデータです。

これにより、歩数のseasonal variationを抑えることができています。

そして歩数は同一人物の前後比較なので、あまり目立った交絡因子がなく、因果関係にかなり近いかと思われます。

 

解釈の注意点は:

・日本人の特定の健保の従業員+家族、と対象が選択的なこと

・スマホの歩数計の計測エラーを考慮できていないこと

・1日510歩の歩数増加は、そんなに目を見張るものではないかもしれない

→この点、「アプリに登録する」というだけの暴露因子なので、個人的には十分だと思いますが。

・検査値については、データが使える人は半分ほどであったこと

・検査値について、歩数が上がった人が改善する、というのは、そりゃそうだろ、という点

→「ケンコム登録後の歩数変化」で層別化していることがポイントですが、それでもケンコムの影響とは言い切れない

→ユーザー間での比較しかできておらず、因果関係を言いたいなら非ユーザーとの比較が必要

こんな所でしょうか。

 

論文では、なぜケンコムが良いのか、行動経済学的な視点で解説が行われています。

面白いので、興味ある方は是非読んでみてください!

 

 

結論

ケンコムの使用は歩数増加に、おそらく寄与する。

それ以上の健康効果は、これからの検証が必要。

こういう解析を可能にした、ケンコムの枠組みがすごい。

ではまた。

-論文解説

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