子供は新型コロナが軽症もしくは無症状ですむ場合が多い一方、重症化して命に関わる場合もあると報告されています。
重症化する場合の経過が川崎病に似ているので、「川崎病様症候群」と言われてきましたが、その特徴は明らかでありませんでした。
今週、アメリカで発症した186人の特徴と経過がまとめられた論文が発表されました。
これを解説していきます。
新型コロナ、重症化する子供の特徴と経過まとめ【多臓器炎症症候群】
新型コロナは子供は大丈夫だと思われてきました。
が。
4月、イギリスで心原性ショックとなった8名の小児患者について発表され、
5月には米国CDCが「多臓器炎症症候群(multisystem inflammatory syndrome in children: MIS-C)」として注意喚起するに至りました。
MIS-Cは川崎病に似ていることが言われてきました。
川崎病は血管炎の一種で、冠動脈に瘤を作るなどします。
川崎病は原因不明ですが、先行する感染との関連が指摘されております。
しかし、MIS-Cが川崎病なのかは不明です。
今回は、このMIS-Cの特徴と経過についてまとめたレポートを紹介します(N Engl J Med 2020; 383:334-346)。
MIS-Cの診断基準は?
5つ当てはまるとMIS-Cです:
・38度以上の発熱
・血液の炎症所見
・21歳以下で入院を要する重篤な状態
・2つ以上の臓器の障害
・COVID-19 PCR陽性 or 抗体陽性 or 明らかな濃厚接触
アメリカ全土からこれを満たす症例を集めました。
その数186名。
どんな特徴だったのでしょうか?
患者の特徴は?
・70%がPCR or 抗体が陽性でした
(その他は濃厚接触ということ)
・8%がCOVID-19の症状あり。その後MIS-Cを発症するまで中央値25日(最低6日、最長51日)でした。
...子供はCOVID-19の症状が出づらいです。そしてMIS-Cになるまで結構時間がある。
・年齢の中央値は8歳
...川崎病より、やや年齢が高い傾向にあります。
・70%が今まで全く健康
...誰がなるかわからない。
・19%が白人、25%が黒人、31%がヒスパニック系、5%がその他の人種、22%が人種不明
...アメリカの集団ですが、白人が明らかに少ないですね。
患者の経過は?
・71%が4つ以上の臓器障害を呈しました
→頻度が高い順に、消化器 92%、心臓 80%、血液 76%
→心臓に臓器障害がある12人に1人が冠動脈瘤あり
これが重症といわれる所以
・40%が川崎病の診断基準に該当
意外に少ない
・80%がICUでケアを受け、20%が挿管され、4%がECMOが必要でした
・70%が退院、28%が入院中、2%(4人)が死亡しました
小児としては死亡率高い。
・亡くなった方は10-16歳で、そのうち2人は基礎疾患なしでした
・退院した場合の入院日数は中央値で7日、死亡した場合は5日でした
多臓器炎症症候群(MIS-C)という病気を認識する
世界では1000例以上のMIS-Cが診断されているようです。
COVID-19が増えれば当然増えます。
MIS-Cとはどんな病気か?
ラフに言うと、こんな感じでしょう(N Engl J Med 2020; 383:393-395):
・SARS-CoV2感染後2-4週間で発症する
・21歳未満、10万人に2人くらいの発症率
*21歳未満でCOVID-19感染は10万人に322人
・黒人、ヒスパニック、南アジアの住民に多い
・一部重症化、心臓を巻き込み冠動脈瘤も形成しうるが、
・小児としては死亡率高い
(ECMOや死亡率が2%程度というのは、大人が対象ならそれほどでもないが、小児だと高い)
・川崎病に似ている部分もあるが異なる部分もある
長期的な経過や治療法については不明です。
川崎病に基づいて免疫グロブリンで治療されるケースが多いようです。
重要な病態ですが、頻度は非常に稀です。
結論
小児でSARS-CoV2感染後、多臓器炎症症候群という病気を発症しうる
重症化しうるが、死亡率は2%程度、頻度はかなり稀。
ではまた。