閉塞性動脈硬化症:血管治療後に抗凝固療法使ってみる?

閉塞性動脈硬化症は、主に下肢の血管が動脈硬化で詰まったり狭窄したりする病気ですね。

病変によってはカテーテル治療や手術が行われますが、その後「血をさらさらにする薬」をどう使ったらよいか、はっきりしていません。

普通動脈系の血栓予防は抗血小板薬ですが、紹介する研究は抗血小板薬+抗凝固薬を使ってみた、というものです。

どんな経緯があり、どんな結果になったんでしょうか。

 

 

閉塞性動脈硬化症:血管治療後に抗凝固療法使ってみる?

閉塞性動脈硬化症:血管治療後に抗凝固療法使ってみる

閉塞性動脈硬化症、最近では末梢動脈疾患(PAD)と言います。

病変によってはカテーテル治療や手術が行われます。

しかし、その後どのように「血をさらさらにする薬」を使うべきか、はっきりわかっていません。

 

✔例えば心臓の血管へのカテーテル治療後には抗血小板薬が2剤使われるのが通例です。

これは、ステント周りに血栓がついて、ステントが再度詰まってしまうステント血栓症(=心筋梗塞)を防ぐ目的です。

 

✔一方、PADのカテーテル治療は次のような点が異なります:

・心臓の血管より足の血管の方が大きいので、ステント血栓症のリスクが低い

・PADは心筋梗塞や脳梗塞の強いリスクである

→PADは動脈硬化が進行していることを示すからです

・しかしやはり一番大事なイベントは下肢の血管閉塞、アンプタ(下肢切断)

 

今のガイドラインは、「PADには抗血小板薬単剤」です。

経験的にPADのステント治療後、抗血小板薬2剤が処方されることは実際多いのですが、それを裏打ちする強固なエビデンスはありません。

 

実は以前、COMPASS trialというランダム化試験のサブ解析で、

PAD患者において、抗凝固療法(低用量のリバロキサバン)が下肢血管閉塞、アンプタ、脳梗塞の予防に効くかも

と示唆されていました。

 

*リバロキサバンというのはNOACと呼ばれる比較的新しい種類の抗凝固薬で、日本では心房細動や下肢静脈血栓症に処方されます。

商品名はイグザレルト。

用法・用量に関してはこちら(やや古いかもしれません)

 

ということで、この記事で紹介する「VOYAGER PAD試験」では、

✔カテーテル治療や手術を行ったPAD患者に対し

✔アスピリン単剤 vs アスピリン+低量リバロキサバン で

✔下肢血管閉塞+アンプタ+脳梗塞+心筋梗塞+心血管疾患による死亡への影響

を比較した、というわけです。

 

 

対象は?

50歳以上のPAD患者で10日以内に下肢のカテーテル治療か手術を行った患者です。

→35%が手術、65%がカテーテル治療でした。

 

彼らが、

アスピリン100mg + プラセボ

アスピリン100mg + リバロキサバン2.5mg×2/day

にランダム化されました。

 

*リバロキサバンは通常、心房細動に対し10mgや15mgを1日1回飲みます。

低用量なのは、前述のCOMPASS trialで低用量リバロキサバンが良いかも、という結果となったためです。

 

primary outcomeは「下肢血管閉塞+アンプタ+脳梗塞+心筋梗塞+心血管疾患による死亡」です。

統計的に90%のPowerを得るため、1015イベントが必要と計算されました。

 

 

結果は・・・リバロキサバンの勝ち

結局6564人がランダム化され、

・リバロキサバン群で508人

・プラセボ群で584人

にprimary outcomeが発生しました。

→ハザード比0.85 (p=0.009)で、有意にリバロキサバンが良いと結論されました。

 

*フォロー期間は3年です。

 

副作用としての出血が気になる所ですね。

・リバロキサバン群で62人

・プラセボ群で44人

に大出血が発生しました。

→ハザード比は1.43 (P=0.07)で、有意ではありませんでした。

 

結局、

1万人をそれぞれ1年間治療したとして、アスピリン単剤と比較しアスピリン+リバロキサバンとすることで、

181人のprimary outcomeを予防

29人の大出血を増やす

と結論されました。

 

*補足:per-protocol effectについて

リバロキサバン群で1080人、プラセボ群で1011人(それぞれ30%以上)が早めに治療を中断しています。

→Intention-to-treat analysisといって、もともとランダム化された集団をベースに計算されています(治療中断の30%がそのまま使用されているということ)

→30%は多すぎるので、「リバロキサバンの効果」と言うよりは、「リバロキサバン群にランダム化された効果」というのが妥当です。

→つまり「リバロキサバンの効果」とは言えない、というのが重要なlimitationになります。

→でも知りたいのは「リバロキサバンの効果」ですよね。これをper-protocol effectといって、いつかのassumptionの基づきInstrumental variable analysisによって一応求めることができます(この論文では言及されていません)

※いつか解説します

 

 

解釈は?

治療後のPAD患者に対しては、アスピリン単剤より、アスピリン+リバロキサバン少量の方がベターだと言えそうです。

上述した「治療中断が多すぎる」というlimitationはありますが、これはおそらく揺るがないでしょう。

 

なんで抗凝固がよいのかは諸説あります。

・この研究のprimary outcomeの中で一番有効性が高かったアウトカムは、血栓塞栓症でした(ハザード比0.67)。

・その他のprimary outcomeの中身は、単独では有意ではありませんでした。

・また、secondary outcomeとしては、血栓症による入院の予防効果が最も効果的でした(ハザード比0.72)。

→よって、PAD患者は血栓症のリスクが高く、それを予防する理由から、リバロキサバンが有効だったのではないかと推察されます。

 

保険承認されている10とか15mgでなく2.5mgを1日2回としたのは、それでも効果的だし出血イベントが少なくなるからです。

リバロキサバン(イグザレルト)は普通に心房細動に使っていても(他のNOACに比べて)出血が多い印象があります。

これくらいの用量がちょうどよいのかもしれません。

*これくらいの用量での心房細動による脳梗塞予防効果は証明されていませんので注意。

 

 

結論

手術またはカテーテル治療を行ったPAD患者において、アスピリン+リバロキサバンは、アスピリン単剤よりもよい。

主には血栓症を予防するため。

ではまた。

-心臓病, 論文解説

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