新型コロナの検査はPCRと抗体検査があります。
抗体はIgGとIgMの検査があります。
色々あって、解釈がそれぞれ違うため、少し混乱しがちです。
今回は、これら検査結果の解釈をまとめた論文を紹介します。
新型コロナの検査、解釈まとめ
ニュースみてると、結構PCRや抗体の解釈間違ってるのを見かけます。
この記事をみて、正しい解釈を身に着けましょう。
そもそも、
・PCRは今の感染を判断する
・抗体は今までの感染を判断する
という基本があります。
例えば昔の感染はPCRでは検出できません。
PCRや抗体検査に日々触れていないとイマイチ想像しにくいかもしれないので、その基本原理を簡単に理解すると良いかもしれません。
それを説明し、最後にかなりわかりやすいグラフを紹介します。
この記事は2020年6月時点での情報です(JAMA. 2020;323(22):2249-2251)。
PCRとは?
PCRは、「ウイルスのRNA(遺伝子)を増幅させて検出する」方法です。
RNAの量はとても少ないので、増幅する必要があるのです。
「検出されるまでに、どれくらいの増幅のサイクルが必要か」
これが肝です。
今は、40サイクル以内に検出可能となったときに、PCR陽性、と判断されています。
ウイルスが元気なとき、ウイルスのPCRはたくさんあります。
→そのため一般的には、ある程度ウイルスが元気な状態においてのみ、PCR陽性となります。
✔どれくらいで検出されるか?
無症候性の人にスクリーニングしているくらいなので、無症候でも陽性とはなりうるということですね。
でも「ある程度のウイルスの元気さ」が必要なので、感染してても無症候なとき=ウイルスが十分元気でないとき、はPCRで検出できないこともあります。
だいたい症状出現後1週間がピークと言われています。治れば検出されない。
これが基本です。
*しかし例外的に、明らかに新型コロナウイルスが負けた後(肺炎が治った後)もPCRが陽性となったという報告がいくつかあります。
この解釈は不明です。
→このため、CDCは「症状がなくなって3日経ったら医療従事者は仕事に戻って良い」と、PCRで判断しない指針を出しています。
抗体とは?
ウイルス(異物)が体内に入ってきたことに対する免疫反応です。
抗体は5種類もあるのですが、感染症の判断に主に使われるのはIgMとIgGの2種類です。
抗体産生は、2種類の免疫反応のうち、ゆっくり反応するタイプのものです(獲得免疫)。
どれくらいゆっくりかというと、ELISAという方法では早くて症状出現後4日くらいから抗体が検出されるとされています。
その後2-3週では、より抗体が多くなります。
ウイルスの中でも何の蛋白質に対する抗体を検出するかで検査精度や意味合いが変わってきます。
・一番多いNCという蛋白に対する抗体は、当然一番見つかりやすいわけです
→よって、その抗体検査は感度が高くなります(陰性なら抗体がない、ということ)
・一方、RBD-Sという蛋白は人間の細胞にくっつく能力をもつもので、これに対する抗体こそが、新型コロナ感染を中和すると考えられています
→この抗体検査は特異度が高く(陽性なら抗体があるということ)、かつ陽性なら今後の感染リスクが低いことを意味するかもしれません。
抗体検査で問題となっていることは、他のコロナウイルス(一般的な風邪の原因)に対する抗体も間違って検出してしまう可能性です。
これはまだ研究中で、結論がでていません。
これがPCRと抗体検査の、今の所のガイダンスだ
横軸は時間。感染したのがweek -2あたりで、発症したのが day 0、とされています。
縦軸は、検査で検知できる可能性。高いほど、「感染している人が陽性になる」確率が高いことを示します。
・緑の実線は「鼻の奥を検査したPCR」です。一番はやく、ウイルスを検出できる可能性が高くなります。
→week 3あたりから陽性になる確率が下がってきます。
・ピンクの実線「痰のPCR」は、やや陽性になるのが緑実線より遅いです。
・IgG(緑の点線)、IgM(紫の点線)はweek 2あたりから上昇してきます。同じくらいのタイミング。
→IgGはその後長く陽性が続きそうです。
*今の所、IgGとIgMの使い分けについてははっきりした見解がありません。
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このグラフはわかりやすいですが、目安です。
当然抗体が早めに検出される人もいます。上に紹介したとおり、PCRも時間が経っても陽性になっている人もいます。
また、あまり基礎疾患の無い成人を対象とした研究をメインに基としているので、子供などに一般化できない可能性も高いです。
今も色んな研究が精力的に進行中です。
結論
PCRは初期の感染、抗体は感染後を同定するために行う。
細かい時系列はグラフを参考に。個人差は当然ある。
ではまた。