診断や治療、無症候感染等についてはたくさんのエビデンスが蓄積されている一方、「治ったあと」の経過についてはあまり報告がありません。
コロナ後遺症とか言われたりもしますが、実際はどういう症状がどれくらい持続するのでしょうか。
(おそらく)初めて系統的に調べた研究が論文発表されたので、これを解説しました。
COVID-19治ったあと、どれくらい症状が続くの?
感染症って、割と何でも「後遺症」があります。
一番代表的なのは風邪ですね。治ったあとに咳が続きます。これは「感冒後咳嗽」といわれたり、持続すると「咳喘息」と診断されたりします。
稀ながら、風邪をきっかけとして膠原病を発症したり、心筋炎となって心停止してしまう、というのもありえます。
(後遺症とは言わないかも知れません)
*なお循環器内科をやってると、風邪のあとの心筋炎はそれなりに経験します。1年で数例くらいいる印象です。
ではCOVID-19はどうか?
今まであまり検討されておらず、今週、おそらく初めて系統的に調べた研究が発表されました。
今週JAMAのResearch letterに発表された研究を紹介します(JAMA 2020 10.1001/jama.2020.12603)。
まだ症状がどれくらい持続するか程度の話ですが、参考になると思います。
どういう研究?
イタリアのローマにある一病院からの報告です。
この病院では、COVID-19患者退院後のフォロー外来を設置していました。
退院基準は、「3日間発熱なし+2日連続してPCR陰性」でした。
179人の退院患者のうち、14人が参加拒否、22人がPCR陽性となったため、143人が解析対象となりました。
*この22人については、PCRの感度が低いため「本当はコロナがいたのに間違って2回陰性に出てしまい退院になっていた」のか、「治ったあと再度感染した」のか、判別不可能です。
この143人の平均年齢は56.5歳、平均13.5日入院していました。挿管管理されていたのは7人でした。
彼らの退院を追いました。
コロナ退院後どうなった?
最初に症状出現した日から、平均で60日後の症状を確認しました。
・完全に症状なしだったのはたった12.6%
・1,2個の症状あり:32%
・3個以上の症状あり:55%
このうち、QOLが低下している人は44%いました。
どんな症状があったか?
多い順に:倦怠感 (53%)、呼吸苦 (43%)、関節痛 (27%)、胸痛 (22%)・・・
発熱はいませんでした。
解釈は?
87%もの方が、退院後60日時点で症状が持続していたという報告でした。
かなり多い!!
小規模、イタリアの単施設研究というlimitationはありますが、一部真実を捉えているでしょう。
つまり、ほとんどの方が「コロナ後遺症」となり、その一番多い症状は倦怠感だということ。
まあ入院するほどのCOVID-19、つまり酸素化低下するほど重症な肺炎なので、そこまで不思議ではないかもしれません。
感染しても全く無症状の方がいる一方、2ヶ月も症状が続いてQOLが低下する方もいる。
人によって症状が全然違います。
なぜこんなにも違うのかは今後の研究課題でしょう。
結論
COVID-19、かなり多くの方が、退院後60日時点で症状が持続していた。
半分くらいの方が、それによりQOL低下をきたしていた。
ではまた。