前立腺がんのスクリーニングって結局やらない方がいいの?

がん検診には必ず含まれるPSAというマーカー。

前立腺がんのスクリーニングです。

実は今までずっと、このスクリーニングをすることで死亡率が上がることが示されてきました。

一方、それに対する反論もずっとあります。

結局スクリーニングした方が良いのでしょうか?最新の情報です。

 

前立腺がんのスクリーニングって結局やらない方がいいの?

前立腺がんのスクリーニングって結局やらない方がいいの?

PSAによる前立腺がんのスクリーニングをやったほうがむしろ悪い。

こういう噂が10年以上前に広まり、ランダム化試験が複数行われました。

 

そもそもPSAは1990年くらいから急速に普及し、前立腺がんの診断数が急上昇した経緯がありました。

つまりPSAは前立腺がんのスクリーニング法としては有用

→でも死亡率が上がるというのは、

「前立腺がんは手術しないでほっておいても生命予後に関わらないものもあり、一方手術することで手術の合併症が起きうる。全部を平均すると後者の影響の方が大きかった」

という意味です。

 

でも常識的に、本当??と思いませんか??

 

*****

実際上記のような結果となったランダム化試験が発表されて以来、アメリカではPSAによるスクリーニングがかなり減りました。

一方、それはランダム化試験の正しい解釈ではない、と主張する人も大勢います(私もその一人です)。

そういう方による、Letter形式の論文を紹介します(N Engl J Med 2020; 382:2465-2468)。

 

 

みんな、ランダム化試験の結果の解釈を誤っている。

よくPSAスクリーニングやらない方が良い根拠として、2つのRCTが引用されます。

・PLCO cancer screening trial(BJU Int. 2019;123(5):854-860.

・ERSPC(Lancet. 2014;384(9959):2027-2035.

それぞれみていきましょう。

 

✔まず、PLCOはそもそも「1年に6回スクリーニングする介入をするか、その介入をしないか」という比較です。

コントロール群も9割が1年に1回のスクリーニングを受けています

結果、16年フォローして死亡率に差がなし、前立腺がん診断率は介入群に多し、というものでした。

つまり年1回のPSAスクリーニングをやらない理由にはなりません。

 

✔ERSPCはスクリーニングするかしないかですが、一番最近の報告ではスクリーニング群で前立腺がんによる死亡率の低下が認められています

もとの報告は11年のフォローアップで、スクリーニングしない群の方が全死亡率が低かったというものでした。

でも11年だと短かった!!

 

まあ普通に考えれば当然ですよね。

→スクリーニングの結果たくさん手術することになって、それによる合併症で死亡率が一時的に上がる

→でもそれで前立腺がんが治った人もたくさんいるので、長期的にみると死亡率低下につながる

こういうことです。

 

「2つの大規模なRCTで前立腺がんスクリーニングの有用性は認められなかった」という文章だけが独り歩きしてしまったのです。

 

 

そして死亡率だけでない

スクリーニングしなくなってから、最初に前立腺がんと診断される時に腫瘍が全身転移している割合が多くなった、という報告が複数あります。

その多発転移の結果生じるADLの低下にも目を向ける必要があります。

また、そういう状態では化学療法が用いられ、その副作用も生じえます。

 

総合して、スクリーニングするベネフィットはある。

と思います。

 

 

問題は、スクリーニングの害をどう評価するか

スクリーニングの害は、over-detectionでしょう。

つまり治療する必要の無い癌を検出してしまうこと。

でもそれも、十分に長期フォローしないと、本当に治療が必要なかったのかわかりません

 

つまりこういうことです:

・RCT初期は、治療群に前立腺がんと診断された割合が高くなる

・でもフォローを長くしていくと、その差は無くなっていく

・つまり結局診断される前立腺がんを、スクリーニングにより早めに診断しているだけ、とも考えられる

 

繰り返しになりますが、つまり十分なフォロー期間がなかったRCTの結果から「スクリーニングは意味ない」と結論してしまったのは誤りだったのでは、ということです。

これを定量的にモデルしてみた結果が論文に掲載されています(N Engl J Med 2020; 382:2465-2468)。

 

*前立腺がんの治療により排尿障害や勃起障害が生じえますが、そのリスクは前立腺がんをほっておいた場合と同様くらい、とも考えられています。

 

 

結局結論は?

このLetterの著者らはやった方が良いと思っています。

ちなみにですが、僕もそう思っています。

 

上記の議論の通り、RCTはむしろやったほうが良いことを示唆しているのです。やると悪い、というのはフォロー期間が足りないだけだった。だからやったほうが良い。

 

更に、PSA値に基づく治療判断も変化してきています。

たとえば、

・PSAが4以上でも積極的に経過観察をしたり

・PSA→生検、でなく、MRIをはさんだり

これらの効果は今後はっきりしてくると思われますが、PSA値に基づいた治療法に選択肢が生まれるという意味でも、PSA値があった方が良いかと思われます。

 

そもそも、PSA値を測ることで死亡率が上がる、という主張は、その行間を全く無視した議論です!!

その行間とは、母集団、治療へのアクセス、治療の質(手術の合併症の低さ)など色々あります。

RCTが一見びっくりするような結果になったから世間の注目を浴びただけかと思われます。

 

一時期話題になった「健康診断を受けると死ぬ」みたいな議論は、ただRCTの結果だけを鵜呑みにした、全く科学的でない議論です

そういう、「論文を正しく解釈してなかったり、そもそも論文を読んでないのに、医学論文のエビデンスを振りかざす非科学的な主張」こそ、ただの害とも言える。

 

 

結論

エビデンスは、PSAのスクリーニングをしたほうが良いことを支持している。

ではまた。

-論文解説

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