レミデシビルがコロナに効くかも、と噂され、日本やアメリカで承認されていますね。
この効果に関する、初めての質の高いランダム化試験の結果が公表されました。
結論から言うと、効きそう。
どれくらい効果が期待されるか、内容を見てみましょう。
Contents
新コロにレミデシビル:ランダム化試験の結果
レミデシビルはもともとエボラの治療薬。
新型コロナに効くかも、ということで研究結果は今までにも報告されてきました。
記憶に新しいのは中国のランダム化試験(この記事で解説しています)。
かなり小規模で、なんとも言えない試験でしたね。
ただ、効くかもしれないことは否定されず、世界で緊急承認された経緯があります。
承認の根拠となったとも言える最新の(質が高い)ランダム化試験の結果が、ついに公表されました(NEJM 2020 10.1056/NEJMoa2007764)。
ACTT-1というランダム化試験の名前です(名前はどうでもいいですね)。
これの結果をみてみましょう。
結果は?
世界60病院、1063名の患者がレミデシビルがプラセボにランダム化されました。新型コロナで入院した患者が対象です。
*この結果はACTT-1研究のpreliminary dataです。
つまり、この研究は終わっていません(患者数は増えています)。
レミデシビルは10日投与するレジュメですが、そのうち1.8%は治療中断されました(副作用などにより)。
これは無視するに足りる数字です。
結果・・・
(レムデシビル vs. プラセボ)
・治るまでの期間は11日 vs 15日(p<0.001)と有意に短かった:1.32倍の早さ
→それなりの重症者の方がレミデシビルの効果は強かった:1.47倍の早さ
→最初から人工呼吸器・ECMOのような超重症者では効果が認められなかった
・2週間後までの死亡者数は32 vs 54:ハザード比0.70 (95%CI: 0.47-1.04)
→有意ではなかった
ということでした。
解釈は?
レミデシビルは効きそう(少なくとも治るまでの期間が短くなりそう)、ということで良いかと思います。
*論文発表前のプレリリースでは、死亡率でp=0.054と有意差なし!ということでしたが、primary outcomeは治るまでの期間でした。
重要なポイントは、この研究はACTT-1研究の全貌でない、ということです。
まだ患者のリクルートは行われていますが、レミデシビルを緊急承認するためのデータとしての、途中経過の結果です。
*なので(と思いますが)、本文中にpower分析(どれくらいの患者数を見据えて試験を開始したか)は触れられていません。
レミデシビルで治療期間が短くなる、というのは、中国のRCTの結果と一致しており(この記事)、おそらく信頼性の高いものでしょう。
この意味からも、レミデシビルを使う意義があると言えそうです。
死亡率改善については、この研究ではハザード比0.70でしたが、p>0.05でした。
Trialでpower分析が行われていない以上、有意でない結果の解釈はできません。
が、これくらいハザード比が低い場合は、患者数を増やせばおそらく有意な結果になります。
→予想では、ハザード比0.80, p<0.001くらいになると思います(Trial終了時)。勘です。
ランダム化試験が長期間行われた場合、解釈が難しくなる部分もあるのですが、このランダム化試験はかなり短いし(入院中のみ)、ドロップアウトもかなり少ないので、結論は信頼できると思われます。
結論
COVID-19にレミデシビルは効きそう。
ではまた。