Compassionate useという医療用語があります。
命に関わる新型コロナ重症者に対して、未承認薬を人道的に使用するという意味です。
レミデシビルが認可される前のCompassionate useに関する話、アメリカからのレポートです。
実際使ってみてどうだったのでしょうか。
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レミデシビル、重症者に投与したら?
レミデシビルはアメリカでは5/1に認可されました。
これ(trialの結果の解釈など含めて)にも賛否両論ありますが、臨床医の中では「効くだろう」という認識が広がっています。
特にコロナ重症者については、人道的使用として世界中で承認前から投与(compassionate use)が行われていました。
今回紹介する報告は、このcompassionate useに関するものです(NEJM 2020 10.1056/NEJMoa2007016)。
投与した人だけのデータですので、「効くかどうか」というのが主要なポイントではありません。
コントロール群の無い報告がNEJMで行われるのはまれです。
なぜNEJMに載ったか。
対象は?
1/25〜3/7の間で、PCRで確定診断されたCOVID-19患者で、以下を満たす方です。
・SpO2<94%
・CCr>30、肝酵素が基準値の5倍未満
・他の(trial中の)薬を使わない事に同意
結局61名が投与され、8人が除外(情報足りない等)、53名が解析対象となりました。
アメリカ・カナダ23人、日本9人、他がヨーロッパです。
投与開始時(ベースライン)で57%が挿管、8%がECMOが使われていました。
結果
Resultsでは、彼らの特徴をかなり詳細に記述しています。
<レミデシビル投与後の経過>
・68%が酸素化改善認められたが、15%は増悪した
・57%が抜管され、75%がECMO離脱した
・47%が退院した
※論文ではClinical improvementをスコアで定義して、invasive ventilation(挿管かECMO)の有無/年齢で比較したKaplan-meier曲線を提示しています。当然invasive治療群、高齢者で改善が悪い傾向があります。
<死亡>
・13%が死亡した:6人がinvasive ventilation使用者、1人が非使用者
・レミデシビル開始後死亡までは中央値15日
・高齢者や腎障害がある方の死亡率が高かった
<安全性>
・60%に副作用が認められた:23%が重篤な副作用
・多いのは肝酵素上昇、下痢、皮疹、腎機能悪化、低血圧など
※薬投与との因果関係は不明です。単純に病態が悪くなっただけかもしれない。コントロール群との比較が必要です
解釈は?
この報告から一般的に言えることは、ほとんどないかもしれません。
重症者を対象にした集団で死亡率13%は低い、とdiscussionで記載されていますが、これも(全て)コントロールと比較しないことにはなんとも言えません。
*特に日本ではかなり良い医療が行われており、ECMO離脱率が高く、死亡率が低いことがいわれています。医療崩壊している地域では逆ですね。
副作用も同様、なんとも言えません。
ウイルス量については検討されていません。
なぜNEJMに載ったか。
重要なのは、初めてコロナ重症患者に対しcompassionate-use programとして、世界中で行った点でしょう。
科学的にはあまり参考になるポイントはなさそうですが、インパクトある論文を書く参考にはなります。
結論
Compassionate useの報告でした。
ではまた。