腎デナベーションって知ってる?【血圧17下げる】

腎デナベーション(renal denervation)とは、腎臓の交感神経を焼灼するカテーテル治療です。

実は昔からある治療法なのですが、2014年の研究で「効かない」と結論されてしまっていました。

しかしその後、「血圧コントロールが難しい人には効くかも」という研究が発表され、再び注目を浴び始めています。

今回はそんな腎デナベーションの最新報告。

どんな患者に対して有効なんでしょうか?

 

 

腎デナベーションって知ってる?

腎デナベーションって知ってる

実は、高血圧の治療法として今も日本でも行われています。

カテーテルを大腿動脈から腎動脈までもっていき、血管の外にある腎交感神経を焼灼する、という手技です。

腎の交感神経が活性化すると血圧が上がるので、reasonableな治療法と言えます。合併症もほぼない。

そして一回カテーテル受ければOK

これは実は昔からある治療法なのですが、あまり聞いたこと無い方が多いのではないでしょうか。

 

実は2014年のランダム化試験(N Engl J Med. 2014;370(15):1393‐1401.)にて、「血圧を下げる効果はない」と結論され、その後普及されなくなった背景があったのです。

降圧剤も今やたくさん良いものがありますからね。

わざわざ高血圧のために、カテーテル治療とはなりにくいです。

 

でもそのランダム化試験、その後に、

・降圧薬のアドヒアランス(ちゃんと飲んでいるか)がかなり人によって異なった

・手術後、かなりの患者が降圧薬に変更があった

・腎デナベーションの手技が一部不完全だった

・これらの因子を考慮すると患者数が十分でなかった

ということが指摘されました(Eur Heart J. 2015;36(4):219‐227.

 

そして2018年頃、3つのランダム化試験にて、腎デナベーションの

「コントロール不良の高血圧で他の併存疾患があまりない患者に対する、短期的な(2-6ヶ月の)血圧低下効果はある」

と示されました(Lancet 2017;390:2160–70., Lancet 2018;391:2335–45., Lancet 2018;391:2346–55.

*ランダム化試験なので、「腎デナベーション vs. カテーテル手術のマネごと(カテーテルは体内に入れるが実際に焼灼はしない)」というすごい比較です。

 

こんな背景があり、今回、腎デナベーションの

コントロール不良の高血圧で併存疾患もある患者に対する、長期的な血圧低下効果

を調べた研究が発表されたのでした(JACC 2020;75:2879-88)。

 

*腎デナベーションは、2020年6月時点では、日本では未承認のようです。保険外でやっている施設はいくつかあります。

 

 

研究デザインは?

コントロール不良の高血圧患者が対象です。

→コントロール不良の定義は、「降圧薬でどう治療しているかに関わらず、血圧が高い」というやや曖昧なものとなっています。

 

彼らを全員腎デナベーションで治療しました

(=ランダム化試験ではありません)

そして、その後の血圧の推移を記録した、という単純な研究です。

 

併存疾患がある患者も多数対象となったので、併存疾患ごとに腎デナベーションの影響もみてみました。

 

 

結果は・・・血圧17mmHgも下がった!?

世界中から2652人の患者が登録されました。

*併存疾患のデータがある患者、3年間フォローした患者はかなり限られております。

 

✔全体では、腎デナベーション治療3年後、

病院で測定した血圧は-16.5 mmHg

・24時間血圧計では-8.9 mmHg

と著明に血圧が下がっていました。

 

✔3年後の24時間血圧計の測定の変化について、併存疾患毎に解析をしてみると、

・ASCVDスコアが高い患者:-7.6mmHg

・難治性高血圧患者では:-10.4 mmHg

・65歳以上では:-8.7 mmHg

・糖尿病患者では:-10.2 mmHg

・慢性腎不全患者では:-10.1 mmHg

・心房細動患者では:-10.0 mmHg

 

→このようにどのリスク群でもしっかり血圧が下がっていました。

*病院で測定した血圧は、さらに6~8 mmHgくらい下がっていました

 

 

✔合併症のリスクは、コントロール群が無いとわからないので検証できません。

→でも少なくとも、一番気になる「腎動脈狭窄」は0.3%とかなり低かったです

 

 

解釈は?

どういう併存疾患の患者においても、少なくとも3年間、腎デナベーションはしっかり血圧を下げる、と主張しています。

 

かなり荒削り(デザインが適当)な研究ですが、臨床医主導の“リアルワールド”データに基づく臨床研究っぽい。

こういうのも好きです。

 

でも残念ながら、「腎デナベーションによって・・」という因果関係は当然言えません

 

limitationがかなり多いです。

いくつか挙げると:

そもそもコントロールと比較していないから、「腎デナベーションの効果」とは言えない

→「腎デナベーションをやった患者のその後の血圧」です

 

腎デナベーション後の降圧薬変更の情報がない

=単純に降圧薬が増やされて血圧が下がっている可能性がある

 

元の降圧薬服用情報で患者選別されていない

→普通腎デナベーションの適応になるのは、降圧薬でコントロールできない患者

*「難治性高血圧」患者として解析されてるが、その内3年フォローしたのは302人のみです

 

・血圧が高い患者が集められているが、どういう状態なのか全くわからない

→世界中のレジストリー研究なので、場所や国によってかなり状況は異なる

→日本だったら降圧薬3剤飲んでも血圧高い人。アフリカだったらお金が無くてタダで高血圧を治したい人、など。

 

・元が2652人と考えると、フォローされていない人(=ドロップアウト)が多すぎ

→重大なselection biasにつながっている可能性

…血圧コントロールが良い人しかフォローされていない、ということ

 

 

リアルワールドデータということで、

・「ベースラインの血圧はかなり高いが、それはしっかり降圧薬で治療してもなかなか下がらない患者」が対象となっており、

・腎デナベーション後は降圧薬が増量されておらず、

・フォロー人数が少ないのは、まだそのフォロー期間に達していないだけ(ドロップアウトでない)

ということを信じれば、腎デナベーションは効果が期待できると言えそうです。

 

臨床医の気持ちに寄り添って、かなり好意的に解釈すれば、腎デナベーションは効く!

(でも恐らく、実際に有効なんだと思います。)

 

*なんとなく臨床医にはメッセージ性があるので、JACCに掲載されたのでしょう。

でもガイドラインを変えるほどでない(=疫学的に妥当でない)ので、NEJMやLancet、JAMAには掲載されなかった。

と推察。

 

 

結論

腎デナベーションは長期的にも有効そうかもしれない。

疫学的なデザインがしっかりとした研究をみてみたい(そうすればガイドラインが変わりうる)。

ではまた。

-心臓病, 論文解説

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