新型コロナウイルスはどれくらい生き残るか

新型コロナウイルスは感染力が強いですが、実際どれくらい生命力が強いのでしょうか。

飛沫感染と言われていますが、何時間くらい感染力を保持するのでしょうか。

これを調べた論文が出版されたので、解説します。

 

新型コロナウイルスはどれくらい生き残るか

新型コロナウイルスはどれくらい生き残るか

噂では3時間とか4時間とか言われています。

実際どうなのでしょうか。

 

4月18日にNew England Journal of Medicineにその研究結果が公表されました(N Engl J Med. 2020;382(16):1564–1567.)。

Correspondenceといって簡単な報告ですが、トピックが重要なのでここで解説します。

 

 

どういう実験?

新型コロナウイルスはSARS-コロナウイルス-2と言われます。

2003年にアウトブレイクしたいわゆるSARSの原因ウイルスが、SARS-コロナウイルス-1です。

この実験は、この2種類のコロナウイルスの生存力の比較です。

 

2種類の実験を行っています。

 

1) ネブライザーでコロナウイルスを含むエアロゾルができます(<5μm)。

これをGoldberg Drumという回転するドラム缶の中に吹き入れて、30分、1時間、2時間、3時間後にウイルスの力価を調べました。

 

2) 銅、ダンボール、ステンレス鋼、プラスチックの表面にウイルスを置き、時間を置いてウイルスの力価を調べました。

 

→これをSARS-CoV-1, 2の両方で行いました。

 

 

結果は?

エアロゾルの実験系では、3時間後も力価が保たれていました。

SARS-CoV-1, 2とも似たような結果でした。

半減期は1.1-1.2時間程度でした。

 

銅の表面では、SARS-CoV-2は4時間ほど、SARS-CoV-1は8時間ほど力価を保ちました。

ダンボールでは両者同じで24時間ほど。

ステンレス鋼でも同じくらいで24-48時間ほど。

プラスチックでは48-72時間くらい保ちました。プラスチック上での半減期は6.8時間程でした。

 

 

解釈は?

この論文では以下のようにまとめています。

・実験系では結構生き残る(力価を保持する)ことがわかりました。

・エアロゾル=<5μmで数時間安定する→飛沫核感染する可能性が示唆されました(例えば気管挿管などの手技に伴った感染)。

・SARS-CoV-1とSARS-CoV-2は同じくらいでした。圧倒的にSARS-CoV-2が流行している原因としては、ウイルス自体の生存力でない因子が重要なことが示唆されました

→具体的には、上気道にウイルス量が蓄積しやすいこと、感染しても無症状の内に他の人に感染させることなど。

 

メインのメッセージは2つ目、飛沫核感染でしょう。

本当に飛沫核感染するなら、医療従事者はサージカルマスクでなくN95を付ける必要があります。

 

しかしあくまで実験系での結果ですあり、解釈には注意が必要です。

 

 

この論文は多くの批判を浴びている

かなりミスリーディングと解釈されうるこの論文、実は多くの批判を浴びています(例えばN Engl J Med. 2020;382:10.1056/NEJMc2007942#sa1.)。

いくつか紹介します。

 

<Johns Hopkins Hospitalより>

・SARS-CoV-1も2も、患者の部屋の空気サンプルからウイルスは検出されなかったという研究がある

・サージカルマスクをつけた医療従事者が、COVID-19の患者の管理において感染しなかったという報告もある

 

<Public Health Ontarioより>

・人間の咳は通常5μmより大きな粒子が産生される

・空気感染するというエビデンスではない。

・読者に誤解を生む可能性がある

 

<Rochester Regional Healthより>

・この実験系は、部屋の空気の入れ替えやマスクが全く効果がないことを前提としている

 

<Hospital for Sick Childrenより>

・湿度の前提が合ってない

・人間が生み出すエアロゾルは何時間も安定しない

 

 

結構痛烈な批判ですね。

 

一方、「エアロゾル感染がないとは言えないし、その可能性が示唆される重要な報告だ」というコメントもあります(Sapienza University of Romeより)。

 

 

これらの批判を受け、筆者らは次のようにコメント(clarify)しています。

空気感染の可能性を示唆しているわけではない

・エアロゾル化した時に、SARS-CoV-2はSARS-CoV-1と同じくらいの安定性がある、ということが正しい解釈だ

・今の所実際にエアロゾル感染するというエビデンスには乏しいが、エアロゾル感染のリスクが有る現場で働く医療従事者は感染リスクが高いという報告もある

 

エアロゾル感染に関しては結論はでない。だからこそ、医療従事者は気をつける必要がある、という結論でした。

 

 

*WHOもホームページでこの解釈に注意喚起をしています。

これによると、

・ネブライザー=人間の咳でない

・実験系と臨床の状況はかけ離れている

ということです。

少なくとも、日常生活に一般化できるエビデンスではありません。

 

*この論文から、「ウイルスが3時間プカプカ浮いている」とは明らかに誤った解釈です。

そんなことは主張すらされていません。

 

 

結論

空気感染するという証拠を出した論文ではない。

エアロゾル感染はするかもしれないししないかもしれない。エアロゾル感染で気をつけるべきなのは、そのリスクが高い医療従事者。

ではまた。

-COVID, 論文解説

Copyright© Riklog , 2020 All Rights Reserved Powered by AFFINGER5.