コロナ感染は防ぐために学級閉鎖した方が良いのか【科学的根拠】

新型コロナは無症候感染が若い人に多いから、子供が知らぬ間に親世代に感染を広げる。

特に学校は危ない。

ということで世界中学級閉鎖されてきました。

でも、なるべくなら子供を学校に行かせたい。

本当に学級閉鎖はコロナ感染を減らしたのでしょうか。

これを検討した論文が発表されました。

 

 

学級閉鎖したらコロナ感染は防げるか

学級閉鎖したらコロナ感染は防げるか

子供は感染の「spreader」として認識されます。

例えばインフルエンザ。学校で友達と遊ぶことで容易にうつります。

学級閉鎖は感染制御としては良い影響があることが、実は昔から示されてきています。

新型コロナに関しては当然エビデンスはなかったのですが、その他のウイルスのエビデンスに準じ、アメリカの多くの州は学級閉鎖を行ってきました。

 

一方、学校にいけないことは、学童にとってかなり良くない。

友達と遊んだり勉強できないだけでなく、学校で運動しなくなるので健康にも良くない。

そこで、実際に今回の学級閉鎖の影響を調べた、アメリカ全土を対象とした研究が発表されました(JAMA 2020 10.1001/jama.2020.14348)。

 

 

どんな研究?

・アメリカの全50州、3/9~5/7の期間が対象です。

暴露因子:幼稚園〜中学校(primary~secondary school)の閉鎖

👉閉鎖前後で比較することで、閉鎖の影響を調べました。

…州ごとに閉鎖のタイミングが違うので、それも考慮しました

アウトカム:住民10万人ごとの1日の感染者数、1日のCOVID-19による死亡者数

 

Interrupted time series analysisという手法を用いています。

すごく簡単に言うと、

・学級閉鎖されてからの時間経過をx軸、アウトカムをy軸として、

・州ごとでregression modelを作り、

・一つのregression modelでそれぞれのモデルを表す(「州」という因子を加える)

という感じです。longitudinal analysis。

*実際はより複雑でちょっと違います

 

☆modelは交絡因子となりうる多くの因子、それと暴露因子とのinteraction termを考えました

→しかし数が多すぎるので、p<0.2をカットオフとしたstep wise法で因子選択を行いました。

 

また、感染・死亡にはタイムラグがあるため、これも調整しています。

*詳細は論文参照下さい。

 

 

結果

<感染者数>

調整済みモデルで、

・学級閉鎖前は1週間に265% [231%, 303%]

・学級閉鎖後は1週間に10% [1%, 18%]

・学級閉鎖の効果は1週間に-62% [-71%, -49%]

でした。

言い換えると、学級閉鎖によって10万人につき424人の感染を阻止することができました。

 

<死亡者数>

調整済みモデルで、

・学級閉鎖前は1週間に186% [175%, 197%]

・学級閉鎖後は1週間に2% [-8%, 14%]

・学級閉鎖の効果は1週間に-58% [-67%, -46%]

でした。

言い換えると、学級閉鎖によって10万人につき12.6人の死亡を阻止することができました。

 

 

解釈は?

学級閉鎖によってCOVID-19のtransmissionが防止されたという観察研究でした。

でも、解釈には注意する必要があります。

 

✔一番重要なのは、「それが学級閉鎖の効果なのか」というポイントでしょう。

「学級閉鎖が行われたタイミング」という因子で、「学級閉鎖の効果」を計算していますが、経時的に色々な介入・制限が行われています。eat-in禁止だったり手洗いの推奨だったり。

論文ではたくさんの因子で調整されていますが(検査数など)、データのポイントも多くなく、stepwiseで調整因子の選択を行っています。

→よって、「学級閉鎖の効果」という因果関係は到底言えません。

学級閉鎖という介入でなく、「学級閉鎖を行った前後での様々な介入の違い」と感染者数の関連性を検証したもの、と言えます。

つまり、ポジティブな結果が出るのは当然と言えます。

 

だから、この研究を基に「学級閉鎖を続けたほうがよい」とは到底言えません。

これ超大事です。

 

NEJMにもcommentaryが出ていますが、学級閉鎖するかしないかというのは、科学的な議論より低次元の問題と言えます(NEJM 2020 10.1056/NEJMms2024920)。

子供が学校へ行けないことで、当然多彩なdisadvantageがあります。

・子供の教育や運動

(これが将来の経済活動の損失につながる事は証明されている)

・子供の食事へのアクセス

(学校へ行かないと栄養十分な食事へアクセスできない人は、大量にいる)

・親の仕事

(子供の世話で仕事できない)

などなど

 

そして子供自身は新型コロナで被害を受けにくい。

*多臓器炎症症候群という死亡率2%くらいの疾患をCOVID-19感染後に発症する可能性はあるが、かなり稀です(この記事参照

 

一方、学級閉鎖すればそれなりに感染は防げるでしょう。これは科学的に証明せずとも、常識的にリスクは少し減ります。

どちらが優先されるべきか、科学的な答えなどありません。

どれだけ頑張って(マイナスを許容して)教育の機会を担保するか。子供に対して責任を取るか。モラルの問題と言えます。

 

 

結論

学級閉鎖後にコロナ感染、死亡率は減ったと言えるが、それが学級閉鎖の影響とは言えない。

学級閉鎖を続ける根拠にはならない。

ではまた。

-COVID, 論文解説

Copyright© Riklog , 2020 All Rights Reserved Powered by AFFINGER5.