癌を患うと違う癌のリスクが上がるか?【最新論文】

癌にはなりたくないですよね。

治療が発展したとはいえ、多くの方が死から逃れられない病気。

診療していると、ある癌が完治した後、他の癌を患う方を見かけます。

今回紹介する論文は、「ある癌にかかること」が異なる癌のリスクとなるか、というテーマです。

 

 

癌を患うと違う癌のリスクが上がるか?

癌を患うと違う癌のリスクが上がるか?

癌を完治した人を「cancer survivor」と言います。

Cancer survivor, アメリカには1700万人いるそうです。

当然cancer survivor達は、全く健康な人に比べると、色々な健康リスクが高い状態にあります。

その中で大きな問題は、再び異なる癌になってしまうこと。

臨床上でもしばしば経験します。

 

今回紹介する論文は、この事象についてかなり細かく調べた報告です(JAMA. 2020;324(24):2521-2535.)。

 

 

どういう研究?

アメリカの21のregistryで

「初発の癌」を発症した20~84歳の方を対象とし、国のデータを用いて「1992年〜2017年での異なる癌の発症率」

を調べました。

→その数154万人!

 

基本的な評価方法はIncidence rateです(発症数もしくはそれによる死亡数 / 10,000 person-year)

→例えば、胃がんのsurvivorでの乳がんのincidence rate、といった感じ。

*incidence rateについてはこちら参照

 

そのincidence rateが健康人と比較してどの程度高いか?

これに関してはstandardized mortality ratio (SMR), standardized incidence ratio (SIR)という指標で評価しています。

→簡単に言えば、下記の因子で調整した後期待される発症数に対する実際の発症数です(observed / expected cases)

... 調整因子:race, sex, age, calendar year

*SMRとSIRについてはこの記事で解説します(2021/1/6公開)

 

 

結果はこちら

全体的にみると、cancer survivorはそうでない人と比較し、

・男性:異なる癌の発症率が11%高く、異なる癌で死亡する率が45%高い

・女性:異なる癌の発症率が10%高く、異なる癌で死亡する率が33%高い

ということになりました。

 

具体的には、

・男性:異なる癌発症は177 / 10,000 person-year、それによる死亡は104 / 10,000 person-year

・女性:異なる癌発症は109 / 10,000 person-year、それによる死亡は62 / 10,000 person-year

*更に具体的には、cancer survivorの男性1000人を10年間フォローすると177人 が発症した、ということです。

 

***

最初の癌を個別にみていくと、

男性:30ある内18の癌が、その後の異なる癌発症のリスク上昇と関連する

→特に咽頭がん(75%増加)ホジキンリンパ腫(59%増加)が顕著

女性:31ある内21の癌が、その後の異なる癌発症のリスク上昇と関連する

→特に咽頭がん(148%増加)食道がん(89%増加)が顕著

 

面白いことに、男性において前立腺がん後は異なる癌の発症リスクが9%低く、死亡リスクも10%低いという結果に。

他の癌の詳細については論文(open accessを御覧ください)。

 

 

解釈は?

超大規模研究で、新鮮な情報なので価値があります。

が、Discussionでも触れられている通り、基本的には「共通の原因」によるリスクをみているに過ぎないです。

 

Discussionで大きく取り上げているのは

・smoking-related:肺がん、膀胱がん、口腔がん、食道がん

・obesity-related:大腸がん、膵臓がん、子宮体がん、肝臓がん

・infection-related:HPV, HIV, HBV/HCVなど

ヘビースモーカーで食道がんを発症したけど治った方は肺がんも発症しやすい、ということですね。

*他にalcohol-related cancerもあります。

 

当然がんリスクを反映する遺伝子変異が共通の原因になっていることも考えられますが、まずはこれら生活習慣のリスクが重要です。

なぜなら生活習慣は是正可能だから。

 

*この解析では生活習慣因子を調整してません。それは純粋にそのデータがないから。

→もし飲酒や喫煙などを調整しきった結果であれば、それは基本的に遺伝子によるリスクという話になってきそうです。

 

 

結論

癌を発症した人は、違う癌になるリスクも高い。

それは共通の生活習慣要素が効いているのだろう。

ではまた。

-論文解説

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