ロックダウン:今後のシナリオは?

全世界でロックダウンが行われています。

これが良いのか悪いのか、いつ終わるのか、誰しも気になることだと思います。

「ロックダウン(を含めたsocial distancing)はどれくらい長く行うべきか、1回きりでよいのか」

これに関する論文がハーバードから出たので、これを解説していきます。

 

 

ロックダウン:今後のシナリオは?

ロックダウン:今後のシナリオは?

ロックダウンを含むsocial distancingにより感染者数はどう変化していくか。

どのくらいの期間やるべきか。

1回で良いのか。

 

誰もわからないのですが、あらゆる推定を駆使することでモデル(推定)することはできます。

ハーバードのグループより、その報告が4月14日にScienceに発表されました(Science. 2020;eabb5793.)。

このちょっと難しそうな、でも重要な論文を解説していきます。

 

*この論文は「COVID-19は今後どうなるか」「social distancingの効果はどうか」の2段構成になっています。この記事は後者の「social distancingの効果はどうか」についての解説です。

 

 

どうやってモデルしたか?

最初に言いますが、方法論は理解する必要ありません。

よってこのセクションは飛ばしてOKです。

気になる方へ、ここに簡単に説明します。

SEIRモデル

SEIRモデルという方法が用いられています。

難しそうに見えますが、これは以下のphaseの頭文字を意味しているだけです

S (susceptible: 感染する可能性あり)

→E (exposure: 暴露)

→I (infectious: 感染)

→H (hospitalization: 入院)

→C (critical care: 集中治療)

→R (recovery: 回復)

 

3つpathwayがモデルされています(入院なし、入院、集中治療必要)。

それぞれの矢印の確率を推定、個人がどのような経過をたどるかをモデルし、集団の感染者数を推定するのです。

 

より詳細なモデル法は難しいしこの論文のメッセージを理解する上で不要なので割愛します。

 

 

推定/前提を理解しておくのは重要

ただし、ここで用いられている前提を理解するのは極めて重要です。

なぜなら、前提が崩れるとモデルは成り立たないからです。

 

✔COVID-19の特徴は以下のように推定されています:

・無症状〜軽症が95.6%、入院必要だが集中治療いらないのが3.08%、集中治療必要なのが1.32%

・挿管の期間は平均4.6日

・感染してから入院するまで平均4日

・集中治療なしの入院は平均8日

・集中治療ありの入院は平均16日(集中治療室に10日)

・冬のR0(1人が何人に感染させるか)は2~2.5

 

アメリカでの医療体制は以下のように推定されています:

・集中治療のベッド数は大人10000人につき0.89ベッド

 

その他の前提は以下のとおり:

・SARS-CoV2が撲滅する可能性がないこと

・誰しも感染する確率は同じ

・一度感染したら二度と感染しないこと

・ワクチンの登場を考えない(論文には記載されていませんが、間違いなくこの前提があります)

 

これらの前提の下、次のような幅をもたせてシミュレーションをしています。

・Social distancingによりR0がどれくらい減少するか(0~60%)

・夏場でR0がどれくらい下がるか(70〜100%)

 

では次から結果です。

 

*いくつか疑問に思われる推定があるかもしれません。

誰しも感染する確率が同じなわけないですし、一度感染したら二度と感染しないかはわからないですよね(そうではないかも、と言われ始めています)。

R0ももっと低下するかもしれません(参照

でも数学的にモデルするには、このような前提が必要です。

例えば後者が真実でない場合、より強力なsocial distancingが必要だ、筆者らは述べています。

結果をみるだけでなく、なんの推定の下なのかを理解するのは極めて重要なのです。

 

 

衝撃の結果:ロックダウンは意味ないのか

まずは1回きりのロックダウン(というかsocial distancing)が取られた場合の結果です。

・social distancingはR0をどれくらい低下させるか(グラフの色)

→黒が0%低下(意味無し)、緑が60%低下(最も効果的)

・どのくらい長いロックダウンを行うか(青いシャドーの箇所の長さ)

・夏場で感染率が低下するかしないか

に分けてシミュレーションされています。

 

<季節変動なしの場合>

このグラフは4週間のロックダウン。

ピークを遅らせますが、それほどすごい効果はなさそうです。

 

これは12週間のロックダウン。

面白いことに、

・social distancingの効果が弱いと、裾の尾が広がったカーブになり

・R0を60%も減らすような介入だと9月あたりに再度ピークがきてしまいます。

 

もしずっとロックダウンしたら・・・

当然social distancingの効果が強いほうが患者は増えないです。

現実的ではありませんね。

 

 

<季節変動ありの場合>

4週間のロックダウンはよい感じにピークを遅らせています。

しかし・・・、

 

12週間以上のロックダウンをすると、冬にいまよりもきついピークがきます。

しかもこのピークは、social distancingを何もしなかった場合(黒線)に比べてよりきついピークなのです!

 

 

これらの結果は、「ロックダウンが意味ある」「social distancingは強力な程よい」という当たり前のような考え方に疑問を呈します

 

 

断続的なロックダウン

筆者らがそのsolutionの一つとして提示しているのが、「断続的な」ロックダウン。

具体的には、1万人につき35人の患者が出た時点で「ロックダウン開始」、1万人につき5人以下になった時点で「ロックダウン解除」とします。

 

ロックダウンによりR0が60%低下するものと仮定したモデルを紹介します。

 

<季節変動なし>

こんなグラフになります。

延々と断続的にロックダウンを繰り返し、医療崩壊しないよう保ちながらherd immunityを目指します。

 

<季節変動有り>

来年になると3ヶ月くらいの(長い)ロックダウン解除期間ができそうです。

 

<季節変動あり、更に集中治療室が2倍になった場合>

5回程度のロックダウンで以降は必要なし。いい感じに感染者数が推移し、2022年頃にはherd immunityが得られます。

 

 

解釈は?

1回きりのロックダウン、条件によっては悪い可能性が示唆されました。

特にもしロックダウンが効果的な場合。季節変動がある場合、冬に今よりもきついピークがきそうです。

あまり強くないロックダウンを長めにやるのは良いかもしれません。モデル上は。

*アメリカの状況でモデルしているので、必ずしも日本に当てはまりません

 

断続的なロックダウンは、それなりに効果的そうです。

ただ、政策として実際そんなことができるのか。かなり疑問の余地はあります。

 

そして、医療のキャパを増やすことは超重要です。

これはそもそもロックダウンが「医療崩壊を防ぐ」目的で行われている事を考えると当然ですが。

キャパを増やすことにかなり注力されるべきと言えます。

 

この研究は、様々な推定に基づいた数学的なモデルです。

でも「いつまでロックダウンするのか」誰にもわからない中、いくつかのヒントが得られました。

 

 

結論

ロックダウンは一時的に医療崩壊を防ぐ、負荷を低減する効果はあります。

しかし長期的にみると、一度きりの効果的なロックダウンが良いか、議論の余地があります。

医療のキャパは増やしたほうが良い。

ではまた。

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