手術をうける前か後にコロナ感染したら?

全国的に待機的な手術が中止または延期となっていることと思います。

患者がコロナ感染しているかもしれないから。

でも実際、万が一コロナ感染している状態で手術をうけたらどうなるのでしょうか。

必要な手術を延期すべき、と言えるほど影響はあるのか。

これに関する最新の報告を紹介します。

 

コロナ感染しながら手術をうけたら?

コロナ感染しながら手術をうけたら?

新型コロナの扱いにくい所は、無症候感染です。

これがあるからこそ、いろんなリスクを取ってコロナを最優先にしなければなりません。

例えば、予定されていた待機的な手術。予定されている=緊急性はない、ということなので、かなりの数が延期、または中止されています。

しかし緊急性はないとは言っても、必要だから手術が予定されているわけです。

 

そして手術を延期・中止する科学的根拠は、今までほとんどありませんでした

→エキスパートオピニオンのレベルでした(エビデンスレベルについてはこちら

 

実際もしコロナ感染した状態で手術をうけると、どれくらい悪いのか。

これが分かれば、手術をどうするか決める手がかりになります。

 

今回紹介する論文は、これを世界中で調べた研究です(Lancet 2020 10.1016/ S0140-6736(20)31182-X)。

 

 

どういう研究?

世界中の病院で手術を受けた患者のデータを集めた観察研究です。多くはスペイン、イタリア、イギリス、アメリカ。

対象は、

・手術の7日前以内にコロナ感染が診断された患者

・手術後の30日以内にコロナ感染が診断された患者

です。

 

なんの手術もOKとしています。

→論文では、待機的手術と緊急手術に分けて解析しています。

 

アウトカムは、手術後30日間での死亡率です。

この他、手術後7日の死亡率、肺合併症(肺炎、ARDSもしくは想定外の挿管)も検証しました。

 

*コントロール群はありません。

 

 

結果は・・・物凄い悪い!

1128名が対象となり、

・1/4が手術前のコロナ診断、3/4が手術後の診断

・1/4が待機手術、3/4が緊急手術でした。

 

全体の30日死亡率は23.8%でした(高い!)。

→緊急手術では25.6%、待機手術では18.9%でした

7日間の死亡率は5.2%でした。

51.2%が何らかの肺合併症を生じました(高すぎる!)。

→死亡した方の8割に肺合併症が認められました

 

多変量解析(ロジスティック回帰)では、

70歳以上、男性、高いASA grade(術前の全身状態の分類)、緊急手術、大手術、が独立して30日死亡率に関わりました。

コロナ感染が術前/術後かはあまり関係ありませんでした。

 

 

解釈は?

解釈に注意

術前でも術後でもコロナ感染すると、30日間で約1/4が亡くなってしまうという衝撃的な結果です。

肺合併症はなんと半数。

 

例えば、発展途上国でリスクの高い患者が緊急手術を行った場合、30日死亡率は14.9%と報告されています。

肺合併症の頻度は、ヨーロッパ2014-2015年で8%と言われています。

これと比べると明らかに高すぎですね。

 

でも解釈に注意が必要です。

 

①最大の論点は「この研究に含まれた手術はどういう手術なのか」という事に尽きそうです。リスクが高い手術ばかりであれば死亡率が高いのは当然。

*これを避けようとしてデータ収集もかなり気を使ったことが言及されています

→しかし実際、こういう状況下でも手術した=手術が必要だった、ということです。

=リスクが高いということです。

 

コントロール群が無いのはちょっと危険です。

→同じ条件で、コロナ感染の有無で比較すれば良いだけの話。なぜこれをしなかったか。

→参加している国は医療崩壊している所が多いです。平均的な医療水準が低下している可能性があります。

→なので、過去と比較するのはフェアでないです。

 

③PCRの検査をされた患者、というのは、それが疑われた患者なわけです

→つまり、手術後に肺関連の合併症が起きたから、PCRをテストしたという意味です

→すると、コロナ感染している中でも重症な人がピックアップされた可能性があります

 

④一番知りたいのは待機手術ですね。

待機手術は250例程度しかなく、一般的な結論が言えるレベルのデータではありません。

 

死亡率25%は衝撃的な結果ですが、かなり過大評価されている可能性があるということです。

コロナ感染のリスクが高い状況において、手術はリスクが高い、とは言えそうですが、どれ程かはわかりません

なるべく避けたほうが良さそうですが。

 

*この論文は、「だから術前にPCRでスクリーニングした方が良い」とまでは言っていません。そういうためには、その戦略の有効性を検証する研究が必要となります。主張は、「コロナ感染すると手術したらかなり死亡率が高いから、何らかの策が必要(より精度の高いキットでスクリーニングしたり、院内感染を防止したり)」ということです。

 

*重要なテーマの論文ですが、解析の質は結構低めです。コロナだからLancet、というわけです

(最近Lancet論文のクオリティが下がっている気がします)

 

 

結論

周術期にコロナ感染すると、半端ない死亡率となる。

コロナ感染リスクが高い状況下では、手術は危険である。

ではまた。

-COVID, 論文解説

Copyright© Riklog , 2020 All Rights Reserved Powered by AFFINGER5.