遠隔医療、流行るでしょうか?
良い面もありつつ、色々な制約因子もあります。
特にお年寄り。一番遠隔医療が必要な層が、うまく有効活用できるか。
これに関する最新調査を紹介します。
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みんな、遠隔医療の準備できてる?
コロナ大流行により、世界は変わりつつあります。
医療での大きな変化は、遠隔医療の導入でしょう。
日本では最初の医療面接が遠隔医療でもよくなりました(今までは対面が原則でした)。アメリカでは外来のかなりの部分が遠隔医療にシフトしています。
遠隔医療、たくさんの事を解決してくれる魔法のようなシステムに感じられますが、実際うまく機能するでしょうか?
医療者側が使いこなせるのは当たり前ですね。
一番重要なのは、患者さんがうまく使えるか。
一番遠隔医療が必要といえる高齢者が使いこなせるのか。これが一番の課題です。
zoomやskype、慣れてない高齢者の方には難しい。
実際、どれくらいの割合の高齢者の方が遠隔医療についていけてないか。これを検討した研究を紹介します(JAMA Intern Med 2020 10.1001/jamainternmed.2020.2671)。
どういう研究?
65歳以上のアメリカ人でMedicareを受けている4525人が対象です。
2018年のデータ。
彼らの、telemedicine(遠隔医療)に対するunreadiness(うまく使えない度合い)を調査しました:
・ビデオ通話が理解できる聴力がある
・説明を一人で理解出来、しっかり話すことができる
・認知症でない
・映像が見て理解できる視力がある
・ネットに接続できるデバイスを持っていて、その使い方がわかる
・メールやネットを使っている(過去1ヶ月以内に使用したことがある)
結果
平均年齢は79歳。69%がヒスパニック系でない白人。
結果、38%がtelemedicineに対するunreadinessが該当しました。
ビデオのセットアップが介護で問題ないとしても、32%が該当。
85歳以上では72%が該当しました。
結構多い。
ロジスティック回帰で検討すると、
高齢、男性、未婚、黒人もしくはヒスパニック、都市部に住んでいない、学歴が低い、収入が低い、自己評価で健康的でない
これらが独立してunreadinessと関連しました。
解釈は?
かなり多くの高齢者は遠隔医療に対応できない可能性がある、という報告でした。
アメリカのMedicare受給者というかなりのselection biasはありますが、日本でも少なからず同様の自体が考えられます。
ビジネスとして遠隔医療が良いとしても、医療の不均一性を減らすため、特に高齢者への対応が必要です。
*ビジネスと医療の公平性は一部相容れませんが、医療においては後者が極めて重要です。
解決策は、例えばこんな感じです:
・ビデオ通話が理解できる聴力がない
→会話を文字におこす(キャプションを加える)
・説明を一人で理解出来、しっかり話すことができない
→介護者の完全なサポートが必要
・認知症
→程度にもよるが、介護者のサポートが必要
・映像が見て理解できる視力がある
→電話をメインの伝達手段とする
*実際、家族や介護者がビデオ通話による遠隔医療の補助ができない場合、電話での遠隔医療がオプションとなっています。
・ネットに接続できるデバイスを持っていない、使い方がわからない
→iPadなど、福祉で貸し出しを行うシステムとする
・メールやネットを使っている(過去1ヶ月以内に使用したことがある)
→IT教育、もしくは介助者のサポート
いきなり全部変えるのは現実的でないですが、徐々にサポートを充実化させていくことが必要です。
国や自治体がリードすべき事項ですね。
結論
相当な割合の高齢者は遠隔医療に対応できない可能性がある。
社会のサポートが必要。
ではまた。