トロポニンと冠動脈カルシウムスコアを使って心血管リスクを層別化する【論文解説】

どういう人が将来心筋梗塞になるか。

今まで徹底的に調べられてきました。

最近注目されている、血液検査の高感度トロポニンと、CTで計測する冠動脈カルシウムスコア。

この2つを組み合わせて、どれくらい心血管リスクが層別化されるのか調べた研究を紹介します。

 

 

トロポニンと冠動脈カルシウムスコアを使って心血管リスクを層別化する

トロポニンと冠動脈カルシウムスコアを使って心血管リスクを層別化する

トロポニンとは、心筋梗塞を診断する際に使用する血液検査です。

トロポニンが高い=心臓にダメージが生じている、ということなので、心筋梗塞の診断となる。

これが基本的な使い方なのですが、

最近、違う側面でその能力が注目されています。

それは、「将来の心血管疾患を発症するリスクがわかる」ということです。

 

つまり、

・あなたのトロポニン値が「感度未満(トロポニンTで3ng/L未満)」だったら、将来心血管疾患になるリスクは低いでしょう。

・あなたのトロポニン値が10ng/Lだったら、結構リスク高いでしょう。

こういうことです。

 

*「高感度トロポニン」といい、より小さな値を測定できるようになったため、これができるようになりました。

上の違いは、かなり小さな差です(心筋梗塞になったら10万ng/Lとか行きます)。

 

でもこの高感度トロポニン、自分の値を測ったことある人は少ないのでないでしょうか?

現時点で健康診断には組み入れられていません。

実際、ルーチンで全員に測るほどのトロポニンの臨床的意義は無いと考えられています。

 

 

そこで、冠動脈カルシウムスコア(CAC)

これはCTで測定できます。冠動脈にどれくらい石灰化があるか。

これも値が高ければ将来の心血管リスクが高いことがわかっています。

 

今回の論文は、高感度トロポニンTとCACを組み合わせたら、どれくらい効率よく心血管リスクを層別化できるのか、という話です(JACC 2020 10.1016/j.jacc.2020.05.057)。

 

 

方法は?

MESA (Multi-ethnic study of atherosclerosis)という有名なコホートを使った研究です。

6749人が対象となりました。

彼らのベースラインの高感度トロポニンTとCACは計測してあり、その後の心血管イベント発症との関連をみました。

 

*この研究のアウトカム(心血管イベント)は、以下の合計です:

心筋梗塞、蘇生された心停止、致死的な心疾患、安定狭心症、脳卒中、その他動脈硬化を原因とする死亡、その他心疾患を原因とする死亡

 

15年フォローし、1002件のアウトカムが認められました。なんと7人に1人以上。

アウトカムがかなり広義なせいです

 

☆前提として、ほとんどの健康な人は、トロポニンを測定すると感度未満になるし、CACは0点(石灰化なし)になります。

→実際、32%がトロポニン感度未満、50%がCAC 0点でした。

→よって、トロポニンが感度未満かどうか、CACが0点かそうでないか、というカットオフが用いられました。

 

 

結果

Rateという指標でどれくらい発症したか計算しています。

Rateとは、「1000人を1年間フォローした時(1000 person-yearで)、何人心血管イベントを発症するか」という指標です。

この1000 person-yearは、100人を10年間フォローでも、10人を100年間フォローでもOKという意味です。

 

1000 person-yearごとの心血管イベント発症率は:

・トロポニン感度未満+CAC 0点:2.8

・トロポニン感度以上+CAC 0点:6.8

・トロポニン感度未満+CAC>0点:11.1

・トロポニン感度以上+CAC>0点:22.6

でした。

 

交絡因子で調整したハザード比は、

・トロポニン感度未満+CAC 0点:reference

・トロポニン感度以上+CAC 0点:1.59 [1.17, 2.16]

・トロポニン感度未満+CAC>0点:2.74 [1.96, 3.83]

・トロポニン感度以上+CAC>0点:3.5 [2.6, 4.7]

でした。

 

 

解釈は?

トロポニンとCACを組み合わせて使うと、よりよい心血管リスク層別化になる、と証明した論文でした。

つまり心血管リスクの高いトロポニン高い人と、心血管リスクの高いCACの高い人は、少し異なる特徴を持つということを示唆しています。

これはまさに自分が専門としている分野に近いです

いくつかコメントが。

 

✔だから何?

これが言いたい。

心血管リスクがわかるバイオマーカーや指標は300以上あると言われています。

その中の比較的新しい2つを組み合わせたというのが今回の研究。

学術的には興味ありますが、実質的になにかインパクトを残すことは無いでしょう。

👉だって、

トロポニンとCRPは?

CACと食事のスコアは?

PM2.5と運動は?

みたいな組み合わせが、無限に考えつきます。

その中でほぼオーバーラップしているものと、今回みたいにあまりオーバーラップしていないものがあるんでしょう。

でもそれがわかったら??

おそらく予防医療のあり方が変わることはありません。

*どういう研究が意味あるのかと言ったら、「〇〇によってトロポニンが下がることがわかった」みたいなものだと思います。

 

✔interactionは?

誰しも気になるのは、トロポニンとCACにinteractionはあったのかということ。

論文上は言及されていませんが、当然author達は気になって調べたんだと思います。

でも有意な結果でなかった。

で論文に載せなかったんでないかと邪推します。

nが6000程度だと有意になりにくいと思いますが

 

でも、interactionが有意でない以上、言えることは「トロポニンとCACは独立して心血管イベント発症と関連する」にとどまります。

それではインパクトがちょっと低い。

だって明らかに、トロポニンと食事のスコアは独立に心血管イベント発症と関連するんだから。

トロポニンとCACの両方をわざわざ測定する意味がわからない

*Interactionがあったら、「トロポニンとCACが高いことによる相乗効果がある」と言えます。

 

******

ということで、JACCのような有名医学誌に載るようなバイオマーカーに関する疫学研究はその意義が問われます。

この研究がそれに見合うものだったか。やや疑問が残ります。

(この研究者達が悪いわけでは当然ありません。Editorの見る目の問題です)

 

 

結論

トロポニンとCACを組み合わせると、心血管リスクを効率的に層別化できる。

でも、その実際的な意義は殆ど無いと思われる。

ではまた。

-論文解説

Copyright© Riklog , 2020 All Rights Reserved Powered by AFFINGER5.