世界中の人々の「ワクチンへの信頼」を調べた【最新論文】

新型コロナのワクチン開発が急ピッチで進む中、「もしワクチン開発されたら人々は打つのか」というのが大きな課題として残っています。

特に日本。HPVワクチンの副反応により厚労省が積極推奨を取りやめた経緯があり、国民全体のワクチンに対する意識が低そうです。

今回紹介する研究は、世界中の人々の「ワクチンに対する信頼性」を評価したものです。

 

 

世界中の人々の「ワクチンへの信頼」を調べた

世界中の人々の「ワクチンへの信頼」を調べた

効果的なワクチンが開発されても、それが接種されなければ意味ありません。

大きな障害となるのが、ワクチンへの信頼性が低いこと

WHOはこの”vaccine hesitancy”を、環境問題と並ぶ「global healthに対する10の危機」と定義しています。

 

当然、「安全で有効性の高いワクチン」は、誰しも接種すべきです。

それにもかかわらずワクチンを接種しない人がいる。

その理由は、

・誤った情報を持っているから

・漠然とした不安があるから

・(稀に)自分の利権に関わるから

など考えられます。

 

大多数の原因は、漠然とした不安があるからでしょう。

情報を調べようと思えば、すぐに正しい情報に行き着きます。

だから、「調べる程の関心は無いけど漠然とした不安がある人」がなぜ多いか、というのが大きな問題です。

 

ワクチンに対する信頼性の低さは、今までの経験に基づく事が多いです。

日本の場合は、HPVワクチンの副反応に関する事案。

副反応が大きく取り沙汰され、厚生労働省が積極推奨を中止するに至りました。

世論に動かされているとは言え、この厚生労働省の動きは大きな公衆衛生的問題でした。

 

さて、今回紹介する研究は、世界中の人々の「vaccine confidence」を経時的に測定したものです(Lancet 2020 10.1016/ S0140-6736(20)31558-0)。

 

 

どんな研究?

2015年〜2019年に、149カ国28万人を対象としたアンケート調査に基づいています。

最大で6回、2/3以上の国が2回以上の経時的な調査を経ています。

*多くの国が、2015年と2018年にアンケート調査を行っていました。

 

どんなアンケートかというと:

・ワクチンは安全だと思う

・ワクチンは大事で子供に打たせるべきだと思う

・ワクチンは有効だと思う

という質問に、「全く同意しない」〜「完全に同意する」の4-5段階くらいで答えます。

 

この研究では、「全く同意しない」と「完全に同意する」以外の回答は「全く同意しないでもないし完全に同意するわけでもない」という1つのレスポンスにまとめました。

*なぜかというと、「全く同意しない」か「完全に同意する」と答えた人の信念は変わらないだろうからです。

 

この3つの答えをアウトカムとし、国ごとに経時的な変化を調べました。

*Bayesian multinominal logit Gaussian process modelというものが使われました。詳細略です。

 

 

結果は?

<ワクチンは安全だと思う>

2015年に「完全に同意する」の割合が

・高かった国:アルゼンチン(89%)、リベリア(86%)、バングラディッシュ(86%)

・低かった国:日本(8.9%)、フランス(8.9%)、モンゴル(8.1%)

 

<ワクチンは大事で子供に打たせるべきだと思う>

2015年に「完全に同意する」の割合が

・高かった国:エチオピア(96%)、アルゼンチン(96%)、バングラディッシュ(95%)

・低かった国:トルコ(22%)、モロッコ(16%)ジョージア(2.7%)

 

<ワクチンは有効だと思う>

2015年に「完全に同意する」の割合が

・高かった国:エチオピア(87%)、アルゼンチン(86%)、モーリタニア(82%)

・低かった国:日本(15%)、モンゴル(13%)、モロッコ(10%)

 

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2015年から2019年にかけて、ワクチンの信頼性(上3つの項目全て)が

低下した国インドネシアフィリピン、パキスタン、韓国、アフガニスタン、ベトナム

・向上した国:フランス、インド、メキシコ、ポーランド、ルーマニア、タイ

でした。

*日本も低下してます(低下した国top 10に入っています)

 

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実際に子供にワクチンを打たせた率y軸上の3つの質問に「完全に同意する」と答えた率x軸にして国をプロットすると、こんな感じになりました:

子供にワクチンを打たせた率をy軸、上の3つの質問に「完全に同意する」と答えた率をx軸にして国をプロット

 

日本が異常な位置にプロットされることがわかります。

アンケート結果もさることながら、接種率もかなり低い(90%いかない)

 

 

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最後に、「ワクチンを打つ」事と相関する因子は、

・ワクチンを信頼している

・医療情報において、家族や友人より医療従事者の意見を尊重する

・科学の高等教育を受けている

・女性

・若年

でした。

*収入は宗教はあまり関連ありませんでしたが、マイナーな宗教であることはワクチンの接種率が低いことと関連しました。

 

 

解釈は?

ワクチンに対する信頼性の低い国が存在する。特に日本は圧倒的に低い。

信頼性が2015-2019年で下がった国もある。インドネシアやフィリピン。

実は、それぞれの国で事情があります

 

<日本>

日本は言うまでもなく、HPVの副反応の事案が原因です。

いろんな人が何度も言っていますが、HPVは接種すべき安全なワクチンです。

厚生労働省が積極推奨をしていないのは、科学的でなく政治的な理由です。

本論文でもDiscussionに明記されていますが、これによるワクチンへの意識の低下が日本で風疹が流行している原因でもあり、早急に解決されるべき重要な問題です。

最近では、みんハピという活動で、HPVワクチンの安全性を周知する動きがあります。私もサポートしています。

 

 

<インドネシア>

インドネシアは2015-2019年でワクチンへの意識がかなり低下しました。

これは、イスラム教のリーダーがMMRワクチンに対する安全性を疑問視した事がきっかけでした。

その後、このワクチンには豚から抽出した成分が含まれており、イスラムの経典に反する、という公式な声明を出した事が、大衆の意識低下に繋がりました。

 

<フィリピン>

フィリピンでは、デング熱ワクチンに関する事案がありました。

2017年頃、有効性が確認されていないワクチンが子供200万人に接種され、その後「デング熱の既往がなくワクチンを接種した人は、デング熱が重症化しやすくなる」事が示されてしまいました。

Antibody-dependent enhancementという現象です。

これにより、国民の「ワクチン全体」に対する不安感が増幅されました。

 

<他>

韓国とマレーシアは、インターネット上に正しい情報が出てこない事が大きな原因のようです。

韓国ではANAKI(韓国語で:子供を薬なしで育てる)という団体が、反ワクチンとしてネット上で強力に活動しています。

 

 

結論

世界全体としてみた時、日本は異常にワクチンの信頼性が低い。

低いには理由がある。

ではまた。

-論文解説

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