コホート研究とケースコントロール研究はわかる。
ケース・コホート研究?なんだそれ??
そんな方のため。
この記事ではcase-cohort研究とは何か、何故良いか、何に気をつけるべきか、非常に簡単に解説しました。
ケース・コホート研究のやり方
あるコホートがある前提です。
ここでは、例えばハーバードのNurses Health Study (NHS)を使ってみましょう。
このコホートは、10万人くらいのナースを30年くらい調査している研究です。
4年ごとに食事習慣がアンケート調査されています。
そしてフォローが始まった頃に一度血液検査も行われており、その血清が保存されています。
今年、あたらしいバイオマーカー「Ultra C」が発明されました!
これは保存されている血清でもきちんと計測できるバイオマーカー。
あなたは「Ultra Cが高いと、将来の心筋梗塞・脳卒中・大腸がん・糖尿病・関節リウマチのリスクが高いんじゃないか」と思い、研究したくなりました。
でもここで問題が。
・1人のUltra Cを計測するのに1万円かかる。10万人だと・・・・・無理だ、払えない。。
・case-controlをしよう!、、、、いや、調べたいアウトカムが5つもあるぞ。。。
→心筋梗塞になった人は2000人。ランダムに抽出したコントロールが2000人。
→脳卒中になった人が1500人。ランダムに抽出したコントロールが1500人。
→・・・・
→コントロールのために結構な人数が必要だな。。。金がない。
そこでcase-cohortだ!!
・アウトカムになった人達。彼らのUltra Cを測らない手はない。測ろう。
・コントロールは、10万人全員から3000人抽出とする!
3000人の中には、当然心筋梗塞になった人も糖尿病になった人もいるだろう。でも関係ない!!
これなら金が足りる!!
・・・・
データが揃いました。
じゃあどうやって解析するのか!?!?
まず心筋梗塞についてやろう。
Ultra Cが10mg/dlより高いか低いかで比較したい(これがexposure、暴露因子です)。
“rate ratio”を知りたい。
*rateとは、person-yearあたりの発症数です。1人を2年追跡したら、2 person-year。2人を1年でも、2 person-year。
まずUltra Cが10mg/dlより高い群において。
・発症数(分子)とは、「心筋梗塞2000人の内Ultra Cが高い人」+「全体からサンプリングした3000人の内、Ultra Cが高く、かつ心筋梗塞となった人数」
・person-year(分母)とは、Ultra Cが高い人それぞれの、「フォロー中断または心筋梗塞になるまでの期間」の和
これを割ったら、Incidence rateの出来上がり。
Ultra Cが低い群においても同じことをやって、Incidence rateが求まる。
2つのincidence rateを割ったら、Rate ratioの出来上がり。
というわけでした。
同じように他のアウトカムの解析もできます。
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なんでcase-control研究が必要か・・・言うまでもありませんね。
金のためです。
*ポイントは、基本的にケースコントロール研究と同じだが、コントロール群にもアウトカムを発症する人がいるという所です。
もし完全にかぶった人が抽出されても(同じ人がケースにもコントロールにも抽出されても)、全然OKです。
フォロー期間が同じであれば、ロジスティック回帰でオッズ比が求まるよ
もう一度やってみましょう。
「ヘルメット着用により、スキーとスノーボード中の頭部外傷をどれくらい予防できるか」知りたい。
今年の冬、8箇所のスキー場で調査しよう。
ケースは、今年の冬、対象のスキー場で頭部外傷となった人。
コントロールはどうする?
それぞれのメインリフトで、10番目、20番目・・・の人がヘルメットかぶってるかどうか、水曜と土曜に調査しよう。
10-11時、13-14時にアンケート調査を行う。
するとこうなった。
・頭部外傷となった(578人):ヘルメットあり(96人)、なし(480人)
*2人欠損値
・リフトで調査した人=コントロール(2992人):ヘルメットあり(656人)、なし(2330人)
*6人欠損値
オッズ比は、(96/656) / (480/2330) = 0.71である。
交絡因子を調整すると、オッズ比0.40となった。
ヘルメットはかなり有効であった。
*オッズ比とロジスティック回帰についてはこちら
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JAMAの論文からでした(JAMA. 2006;295(8):919-924)。
論文に詳細に記述されていませんでしたが、コントロール群で頭部外傷を起こした人はいなかったんだと思います。まあ普通起きませんからね。
→もしコントロール群で頭部外傷を起こした人がいたら、その人はケースとしてカウントされます。
ケース・コホートの良い点悪い点
以上でおわかり頂けたかと思います。
復習すると、
・ケースコントロールと同じようにケースを選ぶ
・全体からランダムに抽出してコントロールとする
・コントロールの中でアウトカムを発症したものはケースとしてカウントする(ケースに移す)
・それぞれの暴露因子を計測、関連性を調査する
という流れです。
✔良いポイントは:
・複数のアウトカムを測定する際、コントロールをその都度選ばなくてよい
→暴露因子計測のためのお金がかからない
・算出されたオッズ比は、アウトカムが稀でなくともリスク比と考えられる(詳細略)
✔悪いポイントは:
・ケースコントロール研究に比較すると、同じ数だけサンプリングしたらコントロールの数が減る(一部ケースとなってしまうから)
→少し多めにサンプリングする必要がある
ザックリいうとこんな感じです。
もしコホート全体の暴露因子を全員分計測できるなら、それがベストです。
でもお金かかるからできないので、ケースコントロールやケースコホートといった研究を行います。
結論
ケースコホートはケースコントロール研究のちょっとした変法。多くのアウトカムに対応できる。
ではまた。