症例対照研究(ケースコントロール研究)って分かりづらいですよね。
実際やったことがあると感覚がわかるのですが、なかなか経験ある方はいないと思います。
この記事では、症例対照研究とは何か?具体的にどうやるか?
わかりやすく、実践的に解説しました。
症例対照研究とは?
新しいバイオマーカーAが発明され、心筋梗塞予測能がかなり高いことが期待されているとします。
これを研究で立証する必要があります。
具体的には「バイオマーカーAと3年間での心筋梗塞リスクが関連する」という仮説を証明したいとします。
*この設定でバイオマーカーAは「暴露因子」と言うのでした(詳細こちら)
本当なら、今から参加者をリクルートして3年間追跡したいところなのですが、そんな時間は待てないし、お金もありません。
こんな時、症例対照研究(ケースコントロール研究)が最適です!
この場合、
ケースとは心筋梗塞になった人
コントロールとは心筋梗塞にならなかった人
となります。
具体的には、
3年前の血液検体が保存されている集団を利用し、その検体でバイオマーカーAを測定します。
→その値と心筋梗塞発症の関連性をみるのです!
では、血液検体を保存されている集団とは、どんな集団でしょうか。
→前向きコホートの集団です。
前向きコホートの中で行う症例対照研究なので、Nested case-control studyと言われます。
Nestedでない症例対照研究
前向きコホートを使わない(=Nestedでない)症例対照研究もできますが、大変だし、できる研究が限られています。
これを説明していきます。
ケース=心筋梗塞
コントロール=心筋梗塞でない人
とします。
*フェアな比較とするためには、3年前に健康だった方が研究対象となります。
✅コントロールをどう決めるか
心筋梗塞患者は、例えば病院のデータベースで特定できます。
でもコントロールはどうでしょうか。
病院のデータベースは、なんらかの病気で通院している患者の情報です。
=バイアスがかかってしまいます。
なので厳密にやるには、例えば市役所のデータベースからランダムに抽出してリクルートする必要がでてきます(それでも住居地というバイアスがかかりますが)。
とても大変、コストがかかります。。
✅暴露因子が限られる
さらに血液検体を使う研究はできないですね。
ふつう3年前の血液検体は保存されていません。
できるのは3年前の状況に関するアンケート調査です。
→よって、「Twitterをたくさん使っていると心筋梗塞になりやすか」みたいな研究はできます。
しかし、思い出し調査の場合、常にrecall bias(思い出しバイアス)から逃れられません。
バイアスがある=研究結果の信頼性が低い、であり、質の低い研究となってしまいます。。。
よって、Nested case-control studyが主流です。
*この例は「前向き・後ろ向き」とも関連する議論です。振り返ってみましょう!(詳細こちら)
暴露因子の測定がアウトカムの測定前なら前向きでしたね。
よって、上述の3年前の血液検体を使った研究は、前向きケースコントロール研究です。
一方、3年前の状況をアンケート調査する手法は、アウトカム測定度後に暴露因子を測定しているので、後ろ向きケースコントロール研究です。
前向きより後ろ向き研究の方が質が低いんでした。
なんで症例対照研究が必要なの?
できるなら前向きコホートを組んでコホート研究をやりたいんです。
でも、コホート研究は参加者のリクルート、彼らの追跡が必要です。
毎回そんなコストはかけられないですね。
だから症例対照研究をやります。
一旦コホートのデータが揃ったら、たくさんのコホート研究が行われます。
コホート研究でOKであれば、ケースコントロール研究をやる必要がありません。
ケースコントロール研究が必要な状況は、新しいバイオマーカーの測定など、コストがかかる場合です。
参加者全員(数万人規模が多いです)のバイオマーカー測定するのは、めちゃくちゃお金がかかります。
なのでケースコントロール研究で、限られた参加者のみバイオマーカー測定するのです。
具体的な症例対照研究の手順概説!
Nested case-control studyのやり方の例をお示しします。
これでイメージが湧くと素敵です!
①まず使うコホートを決めます。
②そのコホートからcase(例えば心筋梗塞発症症例)を同定します。
③次に、例えば年齢や性別でマッチしたcontrolを同定します(心筋梗塞を発症しなかった人)。
→1:1ならcaseと同じ数、1:2ならcaseの2倍のcontrolを使います。
④彼ら(=caseとcontrol)の3年前の検体で新しいバイオマーカーA(=暴露因子)を測定します。
⑤解析は必ずマッチング因子で調整します。
→そうしなければバイアスがかかってしまいます(詳細こちら)
→基本的にConditional logistic regressionを使います(後日解説します)。
まとめ
症例対照研究はコストを抑えるためにやる。
一般的には前向きコホートを使ったNested case-control study。
解析は必ずマッチ因子で調整する。
ではまた。