ステロイドは言うまでもなく炎症を抑える薬ですが、感染症への効果ははっきりと証明されていません。
特に敗血症については数多くのランダム化試験が行われ、結果「効果がないだろう」と考えられています。
でもコロナには効くのか??
最近話題になった研究を解説します。
Contents
コロナにステロイドが効くのか
敗血症にステロイドが効くというエビデンスはありません。
でも、今でも多くの臨床医が、敗血症患者にステロイド投与を行っています。
「〇〇の患者には効く」と信じて。
(エビデンスはありません)
新型コロナにもステロイド投与がたくさん行われてきました。
しかし(当然)、新型コロナにおけるステロイドのエビデンスはありませんでした。
そこで今回、イギリスが国を挙げてランダム化試験を行ったのでありました(NEJM 2020 10.1056/NEJMoa2021436)。
試験デザインは?
イギリスの176の病院で治療された、COVID-19の入院患者です。
この試験に参加することで不利益となるだろうと医師に判断されない限りは全て対象となりました。
✔対象となった方は、2:1で通常のケアと通常のケア+ステロイド(デキサメタゾン6mg/day)にランダム化されました。
✔primary outcomeは、退院・死亡・ランダム化後28日経過、のいずれかとしました
✔正確なpower分析はできませんでしたが、trialを始めてから途中で分析すると、計6000人の患者が必要とされました。
6000人ですよ。日本のアビガンRCTは70人でしたね。
→結局、9355人が研究参加可能と判断され、そのうち3000人弱は他の治療にassign、結果6425人が対象となりました。
結果
平均66歳くらい、男性6割、症状でてから8-9日、入院してから2日、なんらかの併存疾患がある方が56%、PCR陽性が9割弱でした。
やや年齢が高めですね。治療開始もやや遅めです。
28日以内の死亡者は、
・通常のケアで25.7%
・通常のケア+デキサメタゾンで22.9%
→ハザード比は0.83 [95%CI: 0.75, 0.93]でした。
死亡率高すぎる。
デキサメタゾンの優位性は
・挿管患者と酸素投与中の患者に強く、
・酸素投与をされていない患者には認められませんでした。
→挿管患者の死亡率(通常ケア vs. 通常ケア+ステロイド)は41.4% vs. 29.3%、酸素投与されてない方は14% vs. 17.8%でした。
酸素投与されてなくても死亡率14%以上とは・・?
secondary outcomeとしての、入院期間、生存退院、挿管となるリスクについても、デキサメタゾン群の方が良い傾向にありました。
解釈は?
入院中のCOVID-19患者において、デキサメタゾンは28日間の死亡率を低下させる。
特に酸素投与が必要な患者で有効。
ということが示唆されました。
イギリス全てのCOVID-19患者のうち15%がこの研究対象となったそうです。
これが、proposalが作られてから100日で行われた。
すごい力ですね。
小さな国が中国やアメリカに対抗するには力を合わせるしかありません。
この「シンプルだけど大規模なRCT」は、「その薬が効くか効かないか」というシンプルな結論を出すには強力です。患者数が多いから。
なので、「イギリスでのCOVID-19入院患者で入院死亡率が25%くらいの方」については、通常ケアにデキサメタゾンを追加することで死亡率が減ることが期待できそうです。
一方、この高い死亡率は日本の状況とは全く異なります。なんでなんでしょう?
人種の違い、年齢がやや高い、患者が多い事は一つの要因でしょうが、それにしても高い。
4人に1人死ぬわけです。
ここがはっきりしない限り、日本にも一般化できる話とは言えません。
結論
大規模なRCTで少量デキサメタゾンによるCOVID-19死亡の抑制効果が認められた。
しかしイギリスの入院患者での話。
ではまた。