暴露因子を決める時に気をつけること【well-defined intervention/exposure】

臨床研究・疫学研究において最も重要なことは、暴露因子とアウトカムを定めることにあるといっても過言ではありません。その組み合わせの因果関係を言うことが、ほとんどの研究の主題です。ランダム化試験ではデザインの段階でこれが決まります。この記事では、コホート研究において暴露因子を決める際に気をつけること、well-defined exposure/interventionについて解説します。人での研究に携わる方は是非一読下さい。

暴露因子(exposure)ってなに?

暴露因子(exposure)ってなに?

そもそも暴露因子とは聞き慣れないかもしれません。研究では、暴露因子=見極めたい因果関係の原因、と考えて問題ありません。いわゆる「暴露」という意味合いとは少し異なります。

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たとえば「ビタミンDのサプリは心血管病予防に効果的か」という最近のランダム化試験(N Engl J Med. 2019;380(1):33–44.)の暴露因子は、「ビタミンDサプリの服用」です。

たとえば「性別によって〇〇の効果が異なるか」という研究の暴露因子は「性別」です。

たとえば「心臓カテーテル検査後のあるバイオマーカー(トロポニン)上昇が、その後の心血管予後と関連するか」という私の論文(Open Heart. 2017;4(1):e000586.)の暴露因子は、「心臓カテーテル検査後のトロポニン上昇」です。

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これから、この暴露因子を定める際に重要な3つのポイントを説明していきます。

ポイント①:誰が聞いても間違いようのない定義か(曖昧な定義でないか)

当たり前ですが、これをはっきりさせないと研究になりません。

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ビタミンDサプリの服用:どのくらいの用量のビタミンDサプリをどのように服用するか。上述の研究では、1日2000IUのビタミンDサプリの服用、と定義しています。

性別:ふつうbiologicalな性別(sex)です。社会学の研究では、暴露因子がgenderになることがあります。

カテーテル検査後のトロポニン上昇: Upper reference limit値を越え、かつ20%以上の上昇と定めています。

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このように、極めてobjectiveにexposureを定義します

ポイント②:過去の文献や専門家のコンセンサスの基づいた定義か

例えば肥満が暴露因子の場合、一点の計測時にBMI>30というのが定義なのか、BMI>35なのか、1年間に渡ってBMI>30を維持していることか、色々設定しようがあります。これは、ふつう過去の文献に基づいて決めます。過去文献がない場合、誰でも納得できるように考えて決めます。

例えば、私の論文執筆時はカテーテル検査後のトロポニン上昇に関して調べた過去文献はありませんでしたが(だから研究になるのですが)、急性冠症候群の診断ガイドラインに基づきトロポニン上昇を定義した所、acceptされた、という感じです。

ポイント③:その因果関係を証明する意義があるか

ポイント③:その因果関係を証明する意義があるか

これが大事なのは根本的で当たり前なのですが、はっきり意識している方は少ない(私もそうでした)かもしれないので、説明します。

例えばカテーテル検査後のトロポニン上昇が、その後の心血管予後と因果関係があるか調べた私の研究をみてみます。この因果関係を証明する意義はあるでしょうか。

・・・はっきり言ってありません。

・・・・

どういう事かというと、カテーテル検査後のトロポニンが上昇していることが原因で心血管予後が悪くなるとして(実際高いトロポニン値自体というよりはそれが示すconditionが原因なのですが)、だからどうした、ということです。そのconditionをかえることができないなら、意味がないわけです。

でもトロポニン上昇が悪い予後を予測するんだから有用なんじゃない、と言ってくれる方、有難うございます。ただ、悪い予後の予測だったら、因果関係でなく相関関係で十分なのです。この違いは別記事でも解説しますが、「トロポニンが上昇したらその患者の予後は悪いんだろう」という事は、因果関係でなく「トロポニン上昇と予後のunivariateな関連性」をみれば十分、ということです。

もっと深堀りします。「この患者は高齢だからトロポニンが上昇したんだろう」「腎機能が悪いから」。こういうセンテンスは、「〇〇だから」の〇〇が交絡因子であることを暗に示唆しています。そして(私の論文でも確かめようとした)因果関係とは、「年齢も腎機能も・・・・・も全部同じだったときに、トロポニン上昇がその後の心血管予後と関連するか」という事です。

この因果関係が真実だったとすると、カテーテル検査後にトロポニン上昇した患者をみて、「この人はカテーテル検査後にトロポニン上昇する、という悪いconditionを持つ人だ」という認識を持つことができます。そういうconditionが何か分かっていれば科学的には面白い考察ですが、純粋に「トロポニンが上昇した。この患者は予後が悪いんだろう」ということと、臨床上そんなに差がある考察とは思えないわけです。

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まあ、そこまで考えなくても臨床研究なら論文にはなります。なぜなら、多変量で調整したモデルの意味合いが因果関係を追求するためだ、と認識している医者が少ないからです。本来は、「かなりlimitationはあるが、コホート研究で因果関係を言及するために多変量で調整する」のですが。臨床研究では、多変量で調整したモデルの解釈は、「〇〇(暴露因子) was independently associated with ☓☓(アウトカム)」と書きます。この記述は間違っていませんが、その意味合いは上述した通りです。

どういう暴露因子が意味のある暴露因子か

では、どういう暴露因子ならOKなのでしょうか

サプリの服用、はOKです。なぜならそれは介入だから。介入なら、介入をするかしないか選べるので、もし介入とあるアウトカムの因果関係が証明されれば、その介入をした方が良い・しない方が良い、と言及できるため、意味があります。

一方、状態を暴露因子とするのは気をつけて下さい

これは当たり前ですが、非常に大事です。コホート研究において、この点を意識している人が少ないからです。例えば、BMI>30で定義された肥満(状態)が暴露因子、今後10年間の心筋梗塞がアウトカムとして、コホート研究で因果関係を言及したとします。しかし、それは上述のトロポニンと同じく、そんなに意味はありません。一方、「5年間でBMI>30がBMI≤30と体重減少したこと(介入)」という事を暴露因子として同様の因果関係を言及できれば、BMIを減らすという介入が意味のある介入だろう、と推察され、意味のあることが言及できます。

※コホート研究では、実際に「介入」はされて無いのですが、コホート研究で因果推論を行うことを念頭に置くと、あたかもランダム化試験が行われたかのようにかんがえます。

BMI>30という暴露因子で言及された因果関係が全く意味ない、とは言いません。その研究があると、「5年間でBMI>30がBMI≤30と体重減少したこと」という暴露因子を検証する理由になるからです。そしてコホート研究で「5年間でBMI>30がBMI≤30と体重減少したこと」が心筋梗塞を減らすと報告されると、そのランダム化試験を行うことが検討されます。このようにエビデンスが蓄積されていくわけです。

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性別に関しては、性による不公平性(disparity)を証明したい場合、意味のある暴露因子と言えます。様々な他の条件が同じだとした時に、性別によってアウトカム(例えば年収)が異なれば、「性別を原因として年収が異なる」と意味のあることが言えます。

言いたいことは、しっかり考えて暴露因子を定義したほうが良い、という事です。その研究自体にあまり意義がないとしたら、今後どういう研究(暴露因子とアウトカムの組合わせ)を検証する礎となるのか。こういう自分の研究の立ち位置みたいなことをはっきり認識できると、良い研究となります。

結論

暴露因子の定義は、研究の根幹です。

・誰が聞いても間違いようのない定義か

・過去文献や専門家のコンセンサスに基づいた定義か

・その因果関係を証明する意味があるか

このポイントに気をつけましょう。ではまた。

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