Case-crossover研究の方法とポイント

Case-crossover研究とは、同じ人の「暴露因子あり/なし」を比較する研究です。

有名なものは「性交渉が心筋梗塞のトリガーとなるか」といったもの。

この具体的な解析方法、いくつか注意するポイントをまとめました。

この記事を読むと、case-crossover研究の要点を理解することができます。

 

 

Case-crossover研究の方法とポイント

Case-crossover研究のポイント

あまり詳しくない方が多いかもしれませんが、コホート研究や症例対照研究と並び、重要なstudy designです。

主に「acute risk」を調べる目的で使われることが多いです。

 

例えば、

・性交渉は心筋梗塞のトリガーとなるか

・後部座席のシートベルト着用により大事故は防げるか

のようなもの。

あくまで対象は個人です。

その人が事故った時(outcome=1)と事故ってない時(outcome=0)での、暴露因子の有無を比較するわけです。

起きるのは一瞬で、その時その暴露因子があったかどうかは容易に調べられるので、コントロールをどう定義するかがポイントとなります。

 

また、同じ人を比較するので、性別や年齢、既往歴といったものは交絡因子とはなりません(=調整する必要がありません)。

しかし、独特な注意ポイントがあります。

 

この記事ではCase-crossover研究の仕組み、注意点を網羅解説していきます!

ではみていきましょう!

*RCTでない前提です。

 

 

Case-crossover研究の方法!

「コーヒーを飲むことは心筋梗塞のトリガーとなるか」考えていきます(Am J Epidemiol. 1991 Jan 15;133(2):144-53.)。

一番popularなcase-crossover研究である、「心筋梗塞を起こした人を集めて、心筋梗塞が起きる直前の行動と、普段の行動を比較する」ことにします。

 

✔どうやって「普段の行動」を定義するでしょう?

よくある方法は、心筋梗塞発症前1年間のコーヒーの平均的な消費量、とすることです。

心筋梗塞が発症し、この研究にenrollした後に、アンケート調査します。

→これを基に、「発症前にコーヒーを飲んでいる期待値」を計算するのです。

*1年間で「ベースラインの心筋梗塞発症リスク」は同じようなものだと仮定できるので、これが成り立ちます

 

 

実際にどうやる?

例えば「1時間」を単位として考えます。

この単位時間が、コーヒーの影響のある時間です。

 

1日1回コーヒーを飲む人は、

・1年間のうちコーヒーの影響がある時間は365時間

・影響がない時間が8401時間

となります(合わせて1年間)。

 

✔この人が心筋梗塞発症前にコーヒーを飲んでいたら?

 →その人は暴露因子(+)の群、すなわち「相対リスク」の分子に8401時間分がカウントされます。

✔この人が心筋梗塞発症前にコーヒーを飲んでいなかったら?

 →その人は暴露因子(-)の群、すなわち「相対リスク」の分母に365時間分がカウントされます。

 

そして、全参加者分の分子の和÷分母の和=全体の相対リスク、となります。

この相対リスクは、「コーヒーを飲むことで直後に心筋梗塞が生じるリスクが何倍になるか」ということを意味します。

 

*細かい計算(Mantel-Haenszel estimatorといいます)は端折っていますが、直感的にこの計算は正しいことがわかります。

もし本当にコーヒーをほとんど飲まない人(1時間 vs. 8765時間)が、コーヒー飲んだ直後に心筋梗塞を起こしたら?

コーヒーの寄与率はかなり高そうですよね。

この人は「相対リスク」の分子に8765時間寄与するので、直感と一致しています。

 

 

バイアスに注意する

いくら参加者自身を比較すると言っても、バイアスが生じえます。

その構造をいくつか紹介します。

 

リコールバイアスからは避けられない

上記の方法、アンケート頼みです。

「コーヒーを飲んだ直後に心筋梗塞をおこした方」と「コーヒーと関係なく心筋梗塞を起こした方」では、発症前1ヶ月間の平均コーヒー消費量の報告にバイアスがかかりそうです。

これはリコールバイアスと呼ばれ、当然バイアスの原因になります。

しかし構造上、リコールバイアスは一般的に避けられません。

 

*避けるためには「前向き研究デザイン」であることが必要です(詳細こちら

今話しているcase-crossover studyのデザインは、完全な後ろ向き研究です。

当然、前向きのcase-crossover studyをデザインすることも可能です。

 

 

コントロールの期間はいい感じの近さにする

発症時からかなり遠いと、その人の状況がかなり違ってきてしまいます。

case-crossoverの強みは「同じ人を比較するために交絡因子が少ない」ことですが、そのためにはなるべく条件が似た状況を比較する事が重要です。

*exhangeabilityが成り立つ必要がある、ということです

 

しかし一方、carryover effect(暴露因子の影響が、暴露後もある程度の期間影響し続けること)があってはいけません

コントロールは、適度に近くてcarryover effectのない、適度なポイントとすることが重要です。

*コーヒーの場合はcarryover effectはそんなに長くないと思います

 

 

サンプルするタイミングを一定にする(matched referent period)

みんな朝コーヒーを飲みます。そして心筋梗塞は朝に多いです。

つまり、「朝である」ことは強い交絡因子となってしまいます。

また、「冬である」ということも同様、交絡因子となります。

 

このように、case-crossover研究の場合、時間軸が重要な交絡を生み出します。

これをなくすため、「月」や「時間」を一定として症例をサンプリングする方法が一般的です。

これをmatched referent periodの解析、と言います。

 

 

以上。

以上、case-crossover研究の方法と一般的な注意点でした。

ただ、実はcase-crossover研究というのは色んな種類があります。

他に、case-time control研究、fixed-effects case-time control研究、self-controlled case series研究、time series研究というものがあります。

でも、ちょっと細かいのでここでは名前を紹介するだけにとどめます。

ではまた。

-疫学・臨床研究

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