論文で本当によく用いられる指標、ハザード比。1-2割の論文で言及されているのでないでしょうか。
しかし「ハザード比ってなに?」という質問に答えられるでしょうか?リスク比との違いは?
この記事では、ハザード比とは何かわかりやすく解説します。数式はほぼなし!
感覚的に理解、説明できるようになることが目標です。
Contents
ハザード比とリスク比の違い
ハザード比というくらいなので、2群のハザードの比です。
リスク比は、2群のリスクの比です。
つまり、ハザードとリスクの違いを明確にすればOKです。
リスクとは?
リスクは非常に感覚的です。100人の内10人が糖尿病になったとしたら、糖尿病になるリスクは10%です。
ある薬を飲む100人と飲まない100人の、10年間での糖尿病リスクを比較したいとします。飲む群は10人、飲まない群は15人発症しました。するとリスク比は10% / 15% = 0.67となります。
※リスクにおいて重要な点は、フォロー期間で値が変わってくる点です。例えば、1年間でのフォローでは、飲む群は0人、飲まない群は1人糖尿病を発症しました。するとリスク比は0% / 1% = 0となります。
→なので、「◯年間フォローでのリスク比は☓☓」と記述することを心がけましょう。
100人中10人糖尿病になったということは、90人が糖尿病でないという事です。この割合、90%をサバイバルと言うことにします。
ハザードとは?
ハザードの定義は、マイナス「(Logサバイバル)の時間微分」です。
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感覚的には、どのくらいのスピードで糖尿病を発症しているか、という事を表す指標です。これを説明してきます。
①Logは置いておいて、サバイバルの時間微分というのを考えます。
先に言ったように、リスクやサバイバルは時間(フォローアップ期間)によって変わります。0年ではサバイバル100%、1年では99%、10年では90%・・というように。この時間微分(=傾き)なので、どのくらいの速度でサバイバルが減っているか、という事をハザードが意味します。
②サバイバルは時間経過とともに減っていくので、サバイバルの時間微分は必ずマイナスになります(サバイバルの増え方がマイナス、という意味)。ハザードの定義の頭にマイナスがついているのは、値をプラスにするためです(サバイバルの減り方がプラス、という意味)。
③なんでLogサバイバルの微分なのでしょうか。サバイバルは当たり前ですが、0から1の間の値しか取りえません。数の分布として不自然ですね。Logサバイバルとすることで、−∞から0の範囲のいずれかの数値を取ることになり、自然になります。
*このアプローチ方法はロジスティック回帰の理論と同様ですね(詳細は別記事)。
ハザードは「どのくらいのスピードで☓☓を発症しているか」という微分された情報を示す指標です。なのでハザード比は、「そのスピード感が2群でどれほど異なるか」という事を意味します。ただしlogサバイバルの微分をしているので、発症スピードの比ではありません。あくまでスピード感の比。
だから「ハザードが2だった!」と言われても、全然イメージ湧きません。イメージ湧かないのが正しいのです。
ね、ハザード比とリスク比は全然違うでしょ
ハザード比は☓☓発症のスピード感の比、リスク比は一定期間での☓☓発症数の比。全然意味合いが異なります。
しかし、この事実が医療関係者の間では全然認識されていません。
ハザード比=2を「2倍のリスクがある」と解釈してはいけません。
また多くのメタ解析では、アウトカムの指標として、リスク比とハザード比を一緒に(同じ意味合いとして)解析しているのです。
「Relative risk」として。
強引だと思いませんか???
でもこれで通じてしまいますし、ハザード比だけ、リスク比だけ、とするとメタ解析の対象とする研究の数が極めて少なくなってしまうのは事実。
そういうものなのです。
*続き、COX比例ハザードモデルについてはこの記事で解説しています。
結論
ハザード比は疾患発症のスピード感の比、リスク比は一定期間での疾患発症数の比。
両者は全然違います。
ではまた。