栄養素と健康アウトカムの関連性をみるモデル【超解説】

栄養素と健康アウトカムの関連性をみるのに、実は単純な回帰式ではダメなんです。

ちょっとした工夫が必要。

知らないと謎ですが、実はそんな難しい話ではありません。

栄養疫学ならではのポイント、超解説です。

 

 

栄養素と健康アウトカムの関連性をみるモデル

栄養素と健康アウトカムの関連性をみるモデル

例えば脂肪の摂取量と10年間での死亡率との関連性をみたいとします。

年齢、性別などの交絡因子をXとしたときに、ぱっと思いつくモデルは:

死亡率 = 脂肪摂取量 + X

という回帰式。

疫学だとlogistic regressionが多いですね

 

でもそれじゃダメなんですよ、という話です。

「カロリー」をどう考えるか、というのがポイントになってきます。

 

*なおこの記事はregressionの解釈の理解が前提となります。

例えば

死亡率 = 脂肪摂取量 (g) + 年齢

という式において、脂肪摂取量のcoefficientの解釈はこれです:

年齢が同じだったときに、脂肪摂取量が1g増えるごとに死亡率がどれくらい変わるか

→モデルの暴露因子以外の因子が「同じだったときに」という解釈になるのがポイントです。

 

 

カロリーで割れ!Nutrient Density Model

脂肪摂取量(g)と言っても、

めっちゃ食う人はめっちゃ脂肪摂取しているでしょう。

その逆もしかり。

つまり、「総摂取カロリーとの比」というのが、より比較できる「脂肪摂取量」なわけです。

 

それがこのNutrient Density Model!

死亡率 = 脂肪摂取量(kcal)/ 総カロリー(kcal) + X

 

でもこれには問題がございます。

もし脂肪摂取量は死亡率とは関係なく、総カロリーが死亡率と関連していたら??

「脂肪摂取量(kcal)/ 総カロリー(kcal)」のcoefficientはゼロでなくなってしまいますね。

→本当はゼロであって欲しいのに。

 

この問題は、Nutrient Density Modelでは「もし総カロリーが同じだったら」という解釈にならない事から生じます。

そこで、「総カロリー」で調整した、Multivariate Nutrient Density Modelがこちら!!

死亡率 = 脂肪摂取量(kcal)/ 総カロリー(kcal) + 総カロリー(kcal) + X

とりあえずこのモデルを使っておけばOKです。

 

*なお、どんなモデルでも「総カロリー」がcovariateに入っているものをIsocaloric modelと言います。

→もしカロリー摂取量が同じだったら、という解釈となるからです。

 

ただし、脂肪摂取量(kcal)/ 総カロリー(kcal)のcoefficientの解釈には要注意。

総カロリー摂取が同じ時、1%のエネルギーを炭水化物 or タンパク質の代わりに脂肪から摂取した場合の死亡率の変化

 

なぜなら、カロリーは炭水化物、タンパク質、もしくは脂肪からのみ摂取されるから。

です。

 

Standard Multivariate Model

もしこんな式だったら??

死亡率 = 脂肪摂取量(g)+ 総カロリー(kcal) + X

脂肪摂取量(g)のcoefficientの解釈は:

総カロリーが同じだったときに、「炭水化物 or タンパク質の代わりに」脂肪摂取量が1g増えた場合の死亡率の変化

となります。

これ、ややわかりづらいですよね。

→だからMultivariate Nutrient Density Modelが推奨です。

 

 

カロリーで「説明できない」部分!Residual Method

続きましてResidual Method

知らない方は論文で見かけても何やっているか意味不明だと思います。

 

こんな方法です:

1) 「総カロリー = 脂肪摂取量」というモデルのresidual (e) を計算する

2) eは、「総カロリー摂取量とは相関しない脂肪摂取量」を意味する

3) 「死亡率 = e + X」というモデルをつくる

4) eのcoefficientの解釈は:

総カロリーが同じだったときに、「炭水化物 or タンパク質の代わりに」脂肪摂取量が1g増えた場合の死亡率の変化

(Standard Multivariate Modelと同じ解釈です)

 

このResidual Methodを「総カロリーで調整する」という方法も、よく行われます。

死亡率 = e + 総カロリー + X

というモデルです。

Energy-adjusted Residual Methodと言います。

 

*ただしeと総カロリーの相関はゼロで、eの解釈に変わりはありません。

なぜ総カロリーで調整するかというと、総カロリーのcoeffieicientに解釈性が生まれるから、という話です。

 

個人的には解釈の観点からMultivariate Nutrient Density Modelがお勧めですが、Energy-adjusted Residual Methodも広く使われています。

 

 

異なる解釈性:Energy Decomposition

こんなモデルを考えてみましょう。

死亡率 = 脂肪摂取(kcal) + 炭水化物orタンパク質摂取(kcal) + X

 

このとき、脂肪摂取(kcal)のcoefficientの解釈はどうなるでしょうか?

炭水化物orタンパク質摂取(kcal)が同じときに、脂肪摂取量が1kcal増えるごとの死亡率の変化

となりますね。

 

これは「カロリーが同じときに」というIsocaloric modelではありません!!

「additionalに脂肪摂取のみを増やしたときに」 という解釈です。

 

これはNutrient Density ModelやResidual Methodとは根本的に違うことを意味することに注意です。

これも最近よく使われるモデルです。

 

*こんなモデルはどうでしょう?

死亡率 = 脂肪摂取(kcal) + 炭水化物orタンパク質摂取(kcal) + 総カロリー + X

これはダメですね。

脂肪摂取のcoefficientの解釈は、「総カロリー、炭水化物orタンパク質のカロリーが同じときに、脂肪摂取量が増えたら・・・」となりますが、そんなことはありえません。

だってカロリーは炭水化物、タンパク質、脂質のどれかからしか摂取されないから。

実際カロリーはそういう計算式で求められるので、このモデルはfitしません。

 

 

まとめ

栄養素とアウトカムの関連性をみるモデルでは、総カロリーをどう調整するかが重要。

Multivariate Nutrient Density Model(またはEnergy adjusted Residual Method)がお勧め。

Energy Decompositionは解釈が異なる。

ではまた。

-疫学・臨床研究

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