ratio, proportion, rate, percentage:どれも「比」を意味しますが、実は意味が違います。
この記事ではこれら「比」の単語の科学的に正しい使い方を解説します。
*口語での使い方ではないので注意ください。
Contents
Ratio, proportion, rate, percentageの違いを解説
「比」という概念は科学で(科学でなくとも)非常に重要です。
日本語でも「割合」という似たような単語がありますが、英語には「ratio, proportion, rate」あたりが該当するかと思います。
しかし科学論文において、これら3つの英単語は同義語でないのです・・!!
どういう意味、定義なのかはっきりさせて置くことは、これらを科学的に厳密な意味として用いている論文を解釈する上で必須の知識となります。
この記事は一昔前のAmerican Journal of Epidemiologyの有名論文を参考にしています(AJE 1975 102(4) 267-271)。
Ratioとは?
何かを何かで割ったもの、を指します。
A vs. B です。
2つの「何か」は普通「相反するもの」ですが、実は何でもよいです。
日本語で言う「比」に該当することが多いです。
数式でいうと:
ratio = a / b
例えば「男女比=sex ratio」。
これは男性の人数÷女性の人数ですね。
Proportionとは?
分子の部分が分母にも含まれている類のratio、を指します。
日本語で言う「割合」に該当することが多いです。
*よく考えれば、日本語の比と割合の違いもはっきりしないことが多々ありますね。
数式で言うと:
proportion = a / (a+b)
これは「percentage」と同義です。
例えば「男性の割合=male proportion」
これは男性の人数÷(男性+女性の人数)ですね。
Rateとは?
*Rateだけがやや難しいです
ある単位量あたりの変化量、と定義されます。
日本語では・・・・なんと言うのでしょう?
数式のほうがわかりやすいです:
rate = ∆y / ∆x
分母の∆xは「時間」を指すことが多く、その場合rateは「単位時間あたりの変化量」を指します。
これが一番難しいかもしれませんね。
さらに突っ込むと、実はrateには2種類あります。
instantaneous rate
これはいわゆる「速度」です。
数式では、∆x→0とした時のrate、すなわち:
instantaneous rate = dy / dx
ということです。
微分ということ
instantaneous rateの例として、疫学研究では「hazard」という指標が有名です。
このyがsurvivalの時、– log (instantaneous rate) = hazardでした。
*ハザードについてはこの記事参照
average rate
これが疫学研究で頻繁に使う「rate」です。
つまり:
イベント数 / 総person-year
です。
e.g.) 12 person-yearとは、3人を4年間追跡したもの=1人を12年間追跡したもの、でした。
******
average rateの定義、なぜinstantaneous rateに匹敵するものなのか、直感的には理解しにくいかと思います。
自分も長らく、なぜ(疫学研究で使う)rateがhazardと同じカテゴリーの指標として用いられるのか、いまいちわかっていませんでした。
これを紐解くには少々数式の理解が必要です。
この記事にまとめてあります。
さてあなたは正しく「比」の単語を用いているか?
以上、ratio, proportion, rateの定義をまとめました。
いくつか誤用されている例をみてみましょう!!
✔死亡率=mortality rate??
「死亡率○%だった」という表現、mortality rateと言っていませんか?
これは明らかな誤りです。
正しくは、そう、mortality proportionです。
*でも皆mortality rateを使っていますね。もはやそれが単語となっています。
誤った表現=一般的な表現となってしまった、残念な例です。
✔incidence rateって何?
これはめちゃめちゃ混乱する表現です。
ある群の死亡率と別の群の死亡率の比を表現したいなら、risk ratio(もしくはproportion ratio)が正しい表現。
ある集団における「incidence÷person-year」を表現したいなら、rate(もしくはaverage rate)が正しい表現。
*混乱に拍車をかけているのが「incidence」という表現。正確には「発症者数」を意味しますが、慣習的に「incidence proportion(=probability of incidence)」を意味することが多いです。
****
これらの表現、例えば論文で見かけたときには、筆者が何を意図しているのか読み解くのが困難となることがあります。
少なくとも自分で論文を書くときは、正しい表現をつかいたい所です。
結論
ratioはa / b
proportionはa / (a+b)、percentageと同じ
rateは∆a / ∆b
はっきり使い分けましょう。