Time-varying exposureと聞くと、何やら物々しいですが・・・。
実は、ほぼ全ての介入はtime-varyingと言えます。
時間によって変化する暴露因子に対して、どういう研究モデルとなるのか、気になりませんか。
この記事では、time-varying exposureというものをはっきりさせ、その因果推論で何が言えるか概説します。
Contents
Time-varying exposureの因果推論での目的をはっきりさせる
一般的には、「アスピリンを飲んだら」という0か1かの暴露因子による、あるアウトカム(死亡など)への平均の影響を検討するのが、因果推論です。
でもよく考えると、これ、正確でないんですよ。。。
上記のランダム化試験を考えた時、表面上の比較は
・アスピリンを飲む
・プラセボを飲む(アスピリンを飲まない)
の比較となります。
が、実際は
・副作用が発現して服薬中止となるまでアスピリンを飲む
・副作用が発現して服薬中止となるまでプラセボを飲む
という、time-varying exposureなのです。
この種類のtime-varying exposureは、dynamic regimenと言われます。後述。
*プラセボも副作用→中止が生じ得ます
この記事では、
・time-varying exposureというものをはっきりさせ
・その因果推論で何が言えるかはっきりさせる
ことが目的です。
Time-varying exposureとは?
その名の通り、「時間に応じて値が変わる暴露因子」を意味します。
ExposureをA(例えばアスピリン内服)としたら、
研究期間中、ずっとA=1またはA=0である場合、それはtime-varyingではありません。
どういうのがtime-varyingかと言うと、
・1年間A=1、1年後はA=0とする
・胃潰瘍が起きるまでA=1、起きたらA=0とする
こういう治療計画を言います。
そういう意味では、ほとんど全ての治療介入がtime-varying exposureである事に気づきます。
*time-varying exposureの解析法は複雑なので、実際に使われているケースはあまりありませんが。。。
さて、time-varying exposureには、大きく2つあります。
static regimenとdynamic regimenです。
・ex) 1年間A=1、1年後はA=0とする
→Aの値が変わるタイミングが、時間だけに依存する場合
→static treatment strategy(regimen)
・ex) 胃潰瘍が起きるまでA=1、起きたらA=0とする
→Aの値が変わるタイミングが、時間+他の因子に依存する
→dynamic treatment strategy(regimen)
簡単ですね。
この他、deterministic vs. random treatment strategyという分け方もあります。
・deterministic treatment strategy: Aが0か1のどちらかを100%取る
・random treatment strategy: Aが1となる確率が変わる
という。
*疫学研究ではdeterministic treatment strategyを対象とする場合が多いですが、Computer science系の因果推論ではrandom treatment strategyを対象とする場面も多くみます。
Time-varying exposureを用いた因果推論で何が言えるかはっきりさせる
結局は「複数のtreatment strategyを比較する」ということが、因果推論のテーマです。
もしこちらのstrategyだったらどうなっていたか。
つまり例えば:
✔A=0とA=1のstatic treatment strategyを比較する
(これは現実的ではありません。副作用でても飲み続ける、という戦略です)
✔副作用でたら中止する、という2つのdynamic treatment strategyを比較する
→これがほぼ全てのランダム化試験です
✔最初の介入のレスポンスに応じて次の介入を変える vs 最初の介入を繰り返す、という比較
✔最初の介入のレスポンスに応じて次の介入を変える vs 介入しない、という比較
などなど。
staticでもdynamicでも、2つ以上のtreatment strategyを比較する、というのが主題であるという認識で良いです。
strategy自体はいくらでも複雑になり得るので、まずこの基礎的な理解を念頭に置いておくことが、time-varying exposureの解析で重要となります。
結論
ほぼ全てのtreatment strategyはtime-varyingといえる。
複数のtreatment strategyの比較こそが、因果推論の主題である。
ではまた。