Attributable fractionって何?

疫学研究でよく使われる「attributable fraction」って知っていますか?

「このexposureによりイベント数が何倍になったか」を示す指標で、簡単に計算できます。

裁判でもこの値が長く使われてきた経緯があります。

しかし、そんな単純に「因果関係」が導かれるわけはありません。

attributable fractionって、いくつもあるんですよ・・・。

 

 

Attributable fractionって何?

Attributable fractionって何?

よく使われるのがこんな定義です。

暴露因子ありの群での発症率がA

暴露因子なしの群での発症率がB、としたときに、

Attributable fraction = (A – B) / A

この割合が、その暴露因子による(attributable)疾患発症の割合(fraction)、という定義。

*それぞれの群の属性は同じとしています。因果関係なので。

 

極端な例を考えると、

・もし暴露因子により発症率が全く変化しなければA=B

→attributable fraction = 0

・もし暴露因子が発症に必須であればB=0

→attributable fraction = 1

 

確かに、という感じですね。

疫学の授業を受けると、最初の方に習う話です。

*attributable fraction、多くは環境の暴露因子に使われますが(例えばアスベストの影響など)、治療介入の効果判定にも使えます。

 

しかしですね、この定義にはcriticalな問題があるのです。

「時間」の要素を全く加味していないのです。

 

この記事はAmerican Journal of Epidemiologyの有名論文(AJE 1988: 128(6);1185)を参考にしています。

 

 

暴露因子の影響は2種類ある

アスベストを原因とする肺がん発症、というテーマで考えます。

すると、この世界には肺がんを発症した人間とは3種類いることに気づきます。

 

・アスベスト暴露の有無に関わらず肺がんをX歳で発症することが運命付けられていた人(A0)

・肺がんを発症する運命だったが、アスベスト暴露により肺がん発症年齢が早まった人(A1)

・アスベスト暴露により肺がんを発症したが、もしアスベスト暴露がなければ発症しなかった人(A2)

 

A1の方に気づくことが、上のattributable fractionの限界点に気づくポイントです。

 

よくあるattributable fractionの定義:「(A – B) / A」は何を表しているのでしょうか?

A2 / (A0 + A1 + A2)

ですね(算出法は下記)。

これを「excess fraction」と言います。

 

でも、A2の方に「アスベストを原因として肺がん発症した」というのは当てはまらないのでしょうか?

いや、そんなわけはない。

つまり

(A1 + A2) / (A0 + A1 + A2)

というのもattributable fractionである。

これを「etiologic fraction」と言います。

 

巷でよく計算されるexcess fractionは、excess fractionを計算しているに過ぎない、という訳です。

 

*excess fractionの算出法

簡単な算数をしてみましょう。

ある同じ集団(N人)を考えます。

もし暴露因子ありだったら、発症率というのは、(A0 + A1 + A2) / N ですね。これがA。

もし暴露因子なしだったら、発症率は(A0 + A1 ) / N です。これがB

いわゆるattributable fractionというのは:

(A – B) / A = A2 / (A0 + A1 + A2)

 

 

「時間」の要素を考える

例えば「25年後に肺がん発症する運命の人」が、アスベスト暴露により発症までの期間が10年早まったとします。

この方がexcess fractionとして捉えられるためには、どれくらいのフォロー期間が必要なのでしょうか?

肺がん発症しなければならないので、最低15年のフォロー期間です。

長いですね。

つまり、excess fractionはフォロー期間にかなり依存します

 

簡単に計算できるのはexcess fraction。

でも、etiologic fractionを知りたいケースも多々ある。

(どういう状況がどんなattributable fractionが適切か、次の記事で解説します)

どうやったらetiologic fractionがわかるのか???

 

「riskでなくrateで考えたら良いんでないの?」

という声が聞こえてきました。

上でいうAとかBは、いわゆる発症率=riskで、フォロー期間に依存するのは当然です。

発症数÷person-yearの「rate」を両群で考えたら良いのではないか?

つまり、(Aのrate – Bのrate) / Aのrate、ということ。

実は、これは3つめのattributable fraction、「incidence-density fraction」と言います。

 

 

Incidence-density fractionの扱いは難しいぞ

例えば、ある恐ろしい暴露因子XXにより、全員の寿命が半分になるとします。

この場合、XXは全員に影響するので、etiologic fractionは1となります。

非常に簡易化し、死ぬまでの時間がexponential distributionに従う、とします。

XXがない状態で、その期待値(死ぬまでの平均時間)をTとすると、

XXがある状態では、期待値はT/2。

すると、

XXがない群でのrateは1/T(Bのrate)

XXに暴露された群でのrateは2/T(Aのrate)となり、

incidence-density fractionは(1/T–2/T)/(2/T) = 0.5

となります。

全く1でないですね。

 

*ちなみにこの例でexcess fractionを計算すると0.27となります。興味ある方はチャレンジしてみて下さい。回答は論文にて。

 

実は、incidence-density fractionがetiologic fractionと同じになる状況とは、非常に限られています

詳細な仮定は割愛しますが、一般的な疫学研究では同じになることはほとんどありません。

ただ、excess fractionよりは近い値になります。

 

*ちなみに、この記事で解説している通りrateには2種類あります。

上のrateはaverage rateを意味しています。

代わりにinstantaneous rate(ハザード)を用いて計算するとどうなるか?

closed cohortで発症がまれである場合、excess fractionに近似するのです。

面白いですね。

 

 

結論

みんなが習うattributable fractionはexcess fractionを表しているに過ぎない。

時間の概念を加味したetiologic fractionを知りたいケースが、多々ある。

rateを用いてincidence-density fractionを計算できるが、多くの場合etiologic fractionとイコールにはならない。

ではまた。

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