フルーツは美味しいですよね。
健康にも良さそう。
この記事では、「フルーツはどう健康によいか」「100%ジュースは健康的か」「ドライフルーツは健康的か」といった疑問に科学的見地から答えます。
科学的根拠を知って、普段の食生活に果物を取り入れましょう。
Contents
フルーツの持つ健康効果

色々な種類のフルーツがありますよね。
ここでは「果物の総摂取量」としてまとめたメタ解析を紹介します。
果物をたくさん食べる効果
野菜の記事でも紹介しましたが、2017年のメタ解析が非常に分かりやすいグラフを示してくれています(Int J Epidemiol. 2017;46(3):1029–1056.)。

Int J Epidemiol. 2017;46(3):1029–1056. Figure4より改変
・果物を1日で200g食べる量を増やすと13%低い心血管疾患罹患率と関連します。
→この関係性は図のように直線的でありません。
・脳卒中に関しては200gで18%のリスク低下と関連しますが、300g以上摂取すると少しリスクが上向くトレンドが見えます。
→信頼区間は広いのではっきりした関連性とは言えませんが。

Int J Epidemiol. 2017;46(3):1029–1056. Figure5より改変
・果物200gの摂取にて4%の癌罹患リスク低下と関連します。
→この関連性は直線的ですが、心血管疾患と比較して弱い効果です。
・死亡率は200gの摂取で15%のリスク低下と関連します。
→この効果は200-300g程度以上では横ばいとなります。
野菜より果物?
野菜より果物に強く認められる健康効果があります。
・フルーツ摂取量を100g/day増やす毎に、メタボリック症候群を3%予防する効果がありました(Br J Nutr. 2019;1–11.)。
→同研究では野菜による予防効果は有意でありませんでした。
・フルーツを100g多く摂取することで、現在喫煙者と過去喫煙者とも肺がんの発症率を4-5%減らすことができそうです(Nutrients. 2019;11(8):1791.)。野菜の効果は喫煙者に限定されていそうです。
・肝臓がんはフルーツによる予防効果は明らかでありませんでした(Food Funct. 2019;10(8):4478–4485.)。
→野菜には有意な予防効果がありました。
しかし野菜と果物は栄養素が異なります。
どちらかというより、どちらも十分に食べる事が重要です。
野菜または果物

Int J Epidemiol. 2017;46(3):1029–1056. Figure6より改変
・野菜または果物の摂取量が1日200g増えると10%低い死亡率と関連します。
→この関係性は図のように直線的ではありませんが、食べれば食べるほど効果がありそうです(Int J Epidemiol. 2017;46(3):1029–1056.)。
・野菜又は果物を1日5回以上食べることで、1日3回以下に人と比べ、脳卒中のリスクが26%減いかもしれません(Lancet. 2006;367(9507):320–326.)。ちょっと古い文献です。
野菜も果物も沢山食べることが大事です。
果物200gってどれくらい?
リンゴ🍎1個
なし1個
いよかん・デコポン・グレープフルーツ1個
ぶどう🍇1房
みかん🍊🍊2個
バナナ🍌🍌2本
もも🍑🍑2個
キウイ2個
びわ6個
さくらんぼ🍒40粒
参照:毎日くだもの200グラム運動指針
ランダム化研究のエビデンス
上に紹介したメタ解析は観察研究のもので、はっきりと因果関係は言えません。
そこで重要なのはランダム化研究のエビデンス。この最新のメタ解析を紹介します(Nutr Rev. 2020 Jul 1;78(7):532-545.)
・「フルーツの摂取量を増やすだけ」という介入を検討したものはあまりなく、「フルーツを1日3serving以上食べる+その他もろもろ生活習慣の改善」という介入の効果を検証したものです。
・中性脂肪が9mg/dl程度の減少、拡張期血圧2mmHg程度の減少に寄与しました
・LDLコレステロール等、他の指標もちょっと改善しました
・1日3 serving以上を5 serving以上としても、追加効果はありませんでした(が検証している研究が異なるのでなんとも言えません)
ランダム化研究で言えることは「短期」のアウトカムであり、それが心血管疾患のリスクとなるバイオマーカーなのです。
よってこれが改善するということは、引いては心血管疾患の発症も抑制するかもしれない、ということを示唆します。
*でもこれだけみると、大した効果ではないですよね。結局食事の健康に対する因果関係を言うのは難しくて、実際その点議論がある領域でもあります。ただ、フルーツは健康に良いだろうというのは専門家間でほぼ一致している考えです。
他の疾患
心臓病や癌、死亡率以外にも、色々な疾患の予防効果が示唆されています。
・2型糖尿病の低い発症率と関連しました(Nutr Rev. 2019;77(6):376-387.)
・炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎やクローン病)の低い発症率と関連しました(Adv Nutr. 2020:nmaa145.)
100%フルーツジュースは健康的?

フルーツが健康に良いならフルーツジュースも良いだろう、とは残念ながら言えません。
▷ジュースは健康に悪いことが示唆されています。
✔質の低いメタ解析ですが、フルーツジュースは2型糖尿病発症と関連することが示唆されています(BMJ. 2015;351:h3576.)。
✔砂糖入り飲料とカテゴリーすることもあります。そこまでは健康に悪影響を及ぼすとは言えなさそうですが(詳細はこちら)。
製造過程で様々な添加物が混入するから、ジュースはフルーツとは異なります。
▷しかしながら、100%フルーツジュースは、そこまで健康に悪くないかもしれません。
✔ランダム化研究のメタ解析ですが、100%フルーツジュースは血糖値に影響を与えませんでした(J Nutr Sci. 2017;6:e59.)。
ジュースに関して結論がでていませんが、間違いなさそうなのは、
・ジュースでなく、生の果物が良い。
・飲み物はお茶・紅茶・コーヒー・水が良い。
ということです。
ドライフルーツや缶詰は健康的?

フルーツが健康に良いならドライフルーツも良いだろう、と言えるのでしょうか。
2019年、9つのコホート研究のメタ解析が発表されました(Adv Nutr. 2019;nmz085.)。
・伝統的なドライフルーツ(レーズン、プルーン、デーツ)を1日3-5 servings以上食べる人は、殆ど食べない人と比較し、前立腺癌発症率が49%、膵癌による死亡率が65%低い結果となりました。
・研究数が少なく、研究間のバラツキも大きいため、強く信頼できる結果とは言えませんが、ドライフルーツによっても疾患予防効果が有る可能性が示唆されました。
ドライフルーツも健康に良いかもしれません。
一方、フルーツの缶詰は健康に悪いかもしれません。
・死亡率と糖尿病発症に関して、生のフルーツやドライフルーツ摂取は逆相関関係にありましたが、缶詰のフルーツや加糖されたフルーツジュースの摂取は相関していました(Nutr Rev. 2019;77(6):376-387.)
どの程度フルーツを加工すると「健康に悪い食べ物」に転ずるかは、はっきりとしていません。
また、上の文献はメタ解析ですが、ランダム化研究が行えない以上観察研究の結果に基づくものです。結局因果関係を言い切ることはできません(詳細こちら)。
最も効果的なフルーツの摂取方法
フルーツが体に良いことはよく分かりました。では何をどう食べたら良いのでしょうか?
答えは、「色々、たくさん食べる」ということです。
リンゴと癌の関連をみたメタ解析があります(Public Health Nutr. 2016;19(14):2603–2617.)。
・肺がん、直腸がん、乳がんに予防効果があったという結果ですが、この効果は症例対照研究(のメタ解析)で強く認められ、コホート研究(のメタ解析)では関連性が弱かったのです。
・症例対照研究は一般的にサンプル数が少なく、バイアスが過大評価される可能性が高いです。つまり、より信頼性が高いとされるコホート研究では、リンゴの効果は限定的でした。
・特定の果物一つに着目して因果関係を証明するのはかなり難しい(residual confoundingが強い)ことは明記しておきます。
エビデンスは弱いですが、果物一つの種類だけでは健康効果を得るに弱いのかもしれません。
栄養学的には、色々食べたほうが良いに決まっています。
果物も野菜も、色々、たくさん食べましょう。
結論
フルーツは野菜同様健康に良い。
できるだけたくさん、様々な種類のフルーツを、毎日食べましょう。
ではまた。